Research Abstract |
私は,人間の顕在的な時空間認識に与える潜在的なプロセスの影響を調べることを目的とし,これまで2つの観点で実験研究を行い,新たな知見を示す結果を残している.1つ目の対象認知に与える潜在記憶の影響を調べた研究では,視覚探索場面において,視覚的注意を誘導させる新たな視覚的文脈の存在を明らかにした.2つ目の時間認識に与える潜在記憶の影響を調べた研究では,これまでの研究で調べられていなかった,時間知覚に与える潜在記憶の影響をはじめて明らかにした.これらの研究成果をもとに,平成16年度は,海外の雑誌に2本,国内の雑誌に1本の論文が採択された.学会発表に関しては,国際発表を1回,国内発表を2回行った. その他に,時間認識に与える虚偽記憶の影響を調べる研究を行った.この研究は,実際には見ていないものを見たことがある,と思ってしまう現象(虚偽記憶)を利用し,時間認識に与える意識的要因と無意識要因を分離することを可能にした.これにより時間認識に意識的要因の影響が明らかになった.現在,この研究成果は海外の雑誌に投稿中である. また,人間の時間認識に与える選択的注意の影響を調べる研究を行った.この研究では,これまで異なった領域で研究されてきた時間認識と選択的注意の関係を調べ,我々が感じる時間が選択的注意によって伸縮することをはじめて明らかにした.この研究成果は,日本心理学会第69回大会で発表予定である. 現在は,時間認識に与える主観的大きさの影響を調べる研究を行っている.今後の研究の成果はVision Sciences Society annual meeting,日本心理学会,あるいは日本基礎心理学会で発表するとともに,知覚,記憶関係の専門誌に投稿する.
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