Research Abstract |
昭和初期から国立公園に指定されているため,3種のミツバツツジ節,ミツバツツジ,キヨスミミツバツツジ,トウゴクミツバツツジの自生地が広く保存されている箱根地域をモデルケースとして,箱根火山域のミツバツツジ節交雑帯における浸透性交雑の実態を,植物生態学的手法と分子生態学的手法を用いて調べ,自生地における種間の浸透性交雑の実態を明らかにした。 箱根火山域に自生するミツバツツジ節(ミツバツツジ,キヨスミミツバツツジ,トウゴクミツバツツジ)の花(雄蕊の数,子房の腺点,子房の毛色,花柱の毛)と葉(鋸歯の有無,葉柄の毛)の形態からミツバツツジ節3種および中間型を同定した。さらに,それぞれの分布域,花期,出現頻度,母性遺伝である葉緑体DNA(matK)と両性遺伝である核DNA(ITS領域)の分析から浸透性交雑を検証した。 その結果,(1)ミツバツツジとキヨスミミツバツツジ,キヨスミミツバツツジとトウゴクミツバツツジはそれぞれ親和性があり交雑種を生じている可能性があること,(2)中間型は互いの種が共存する標高帯で生じていること,(3)花期の重なりが長いキヨスミミツバツツジとトウゴクミツバツツジの中間型のほうが,ミツバツツジとキヨスミミツバツツジの中間型よりも,出現頻度が高いこと,(4)中間型の出現確率は,9%以下であること,などがわかった。これらの結果から,ミツバツツジ節を用いた自生地復元緑化などでは,本来の分布域や出現確率に配慮した緑化計画を練る必要があると考えられる。 これらの成果を,東アジア生態学会で発表した。
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