2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J05331
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大森 馨子 日本大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 触覚 / 錯視 / 感覚モダリティ間相互作用 |
Research Abstract |
われわれは,対象が持つかたちや大きさ,質感などの情報を視覚と触覚両方から得ることができる。視覚からの情報と触覚からの情報が同時に獲得されるとき,それらの情報はどのように処理されているのか?Berkeley(1709)は,空間知覚は視覚ではなく触覚の経験に基づいていると論じた。この主張に対して,初期の心理学における実験的な研究の多くは,視覚が触覚よりも優位であることを示してきた(e.g., Rock & Victor,1964)。しかし,早期失明者の開眼手術後の知覚に関する研究においては,視覚的なかたちの知覚の成立には視覚自体だけではなく,触覚が大きな役割を演じていることが明らかにされている(鳥居・望月,1992,1997;梅津,1997)。また近年の心理学では,視覚正常者においても,触覚が視覚よりも優位になる場合があることが報告されている(e.g., Ernst, & Banks 2002)。このような点から,視覚正常者を対象とし,湾曲錯視図形と錯視を生じさせない線図形を用いて,触覚情報が視覚に対して影響を与えるのか比較検討を行った。その結果,湾曲錯視図形を用いた検討では,主線の湾曲の"見え"は触覚情報の影響を受け,触覚情報の方向へ偏向することが示唆された。しかし線図形を用いた検討では,線図形の "見え"は触覚情報の影響を受けないことが示された。今回用いた湾曲錯視であるヘリング錯視図形とブント錯視図形は奥行(3次元)を見ることができる錯視図形である。それに対して線図形は,2次元で捉えることのできる図形である。触覚の世界は常に立体であり,3次元に強いと考えられ,そのため錯視図形では触覚情報の影響を受け,線図形では受けなかったのではないかと推察される。
|
Research Products
(1 results)