2004 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス・メディア教育学における思想と実践の発展史研究
Project/Area Number |
04J05550
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上杉 嘉見 名古屋大学, 大学院・教育発達科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | メディア教育 / メディア・リテラシー / 英語科 / 批判的分析 / イギリス / カナダ・オンタリオ州 |
Research Abstract |
本年度は,おもに2つの研究課題に取り組んだ。 第1点目は,イギリスにおけるメディア教育の歴史および理論に関する研究である。 この課題に取り組むために,まず昨年6月に,イギリス・ロンドンに所在する英国映画協会(BFI)とロンドン大学教育学研究所を訪問し,1960年代の映画教育から現在のメディア教育に到るまでの教育課程,教材,メディア教育学者の主要論考,教師による実践報告などの資料収集をおこなった。また,現在のイギリスのメディア教育界において影響力を持っているBFI教育部門のバザルジェット氏と,ロンドン大学のバッキンガム教授に対するインタビューを実施した。 その結果,60年代の識別アプローチによる映画教育を経て,イデオロギー論の導入などにより社会批判的な性格を強めたイギリスのメディア教育が,80年代以降,BFIが推し進めたメディア教育のナショナル・カリキュラムへの導入と同時に,新自由主義政策のもとで産業振興策に取り込まれ,批判的な分析よりもメディア作品の制作をとおした表現力の育成が重視されるようになったという歴史的経緯が明らかになった。 第2点目の課題は,カナダ・オンタリオ州のメディア・リテラシー教育の発展史の解明である。これは,本研究がオンタリオとイギリスの歴史・実践との比較を最終目的としていることから,必要な作業である。 この研究では,メディア・リテラシー教育の目的が教材の中でどのように実現されているのかに注目し,さらにその目的論を,同時代におけるメディア理論と政治的環境に関連づけて分析した。その結果,社会批判的な教育内容として成立したメディア・リテラシー教育が,いったんは保守政権下で存廃の危機に晒されたものの,教師たちの努力によってその場所と批判性を維持していることが明らかになった。 この研究成果については,『教育学研究』誌上で昨年10月に発表済みである。
|
Research Products
(1 results)