2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J05564
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川名 雄一郎 名古屋大学, 経済学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | J・S・ミル / ジェイムズ・ミル / ベンサム / 文明社会 / 哲学的急進派 / アメリカ / 議会改革 / 社会科学方法論 |
Research Abstract |
まず、功利主義をめぐる1830年代イギリスの思想状況について研究をすすめた。ベンサムからJ・S・ミルにいたる古典的功利主義の流れだけでなく、神学的功利主義についても検討を行い、現在ではほとんど注目されることのない神学的功利主義の重要性を、神学的功利主義者であるジョン・オースティンの議論をミルとの関係に即して検討することで、明らかにした。その成果は論文としてまとめ公表した(「ジョン・オースティンの功利主義論とJ.S.ミル」、『イギリス哲学研究』、29、2006年)。 また、J・S・ミルの社会思想を当時のコンテクストに位置づける研究を行った。具体的には、文明社会論という枠組みをミルがどのように用いているかに関して、同時代の議論と比較しながら検討した。比較対象としたのは、父のジェイムズ・ミル、ウィッグ思想家(シドニー・スミス、フランシス・ジェフリなど)、トーリー政治家・思想家(ロバート・ピール、トマス・ハミルトンなど)である。これら3者はそれぞれに特徴的な議論を行っており、この比較は当時の思想潮流を明らかにする上でも重要であり、またこれらの議論との比較によって、ミル自身がどのような知的系譜を念頭において議論を展開していたかを明らかすることができた。さらに、このような文明社会を理解する方法としてミルが提示した議論を、これまで検討の対象とされることが少なかったデュガルド・ステュアートとの関係に着目して研究した。 なお、ロンドン大学ユニヴァシティ・カレッジに赴き研究を行った。同大学ベンサム・プロジェクト・ダイレクターであるフィリップ・スコフィールド教授をはじめとする同プロジェクト関係者との意見交換をおこない、功利主義をめぐる世界的な研究動向の理解に努め、その成果についても公表した(「学界展望:J・S・ミル研究の現在」、『イギリス哲学研究』、29、2006年、山本圭一郎氏との共著)。
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Research Products
(3 results)