2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J05565
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
須賀 宣仁 名古屋大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員
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Keywords | 公共中間財 / 国際的な規模の経済性 / 貿易パターン / 貿易利益 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は、以下のように要約できる。 1.純粋公共中間財が存在する場合の貿易利益の分析に関しては、本研究の当初の段階では看過されていた新たな視点からの分析を試みた。当初、本研究では公共中間財がリンダール・ルールに従って効率的に供給されるケース、したがって、パレート効率的な貿易均衡が達成されるケースに焦点を当ててきた。しかし、各国政府が他国の公共財供給量を所与とみなして自国の経済厚生を最大化する場合には、リンダール・ルールとマーシャル調整過程の下で実現されるパレート効率的な貿易均衡とは異なり、各国は常に貿易利益を得るであろうことが示された。 2.平成16年度は、上記の研究と平行して、国際的な規模の経済性をともなう国際貿易モデルについても研究を行った。この研究成果は"International Economies of Scale and the Gains from Trade," Journal of Economics (forthcoming)として結実している。さらに本研究では、上記論文が受理されるまでの修正過程を通して、地理的に"局所化された規模の経済性(localized external economies of scale)"の発生メカニズムについて新たな知見が得られた。実際、国際貿易の理論研究でしばしば応用される分業(division of labor)モデルに氷塊型の中間財輸送費を導入すると、上記の雑誌論文とほぼ同様の貿易パターンが実現されることが明らかになった。また、中間財貿易の導入により、貿易される財の数に応じて貿易均衡での一国の厚生水準がどのように変化するのかを考察すること(例えば、すべての財が貿易される場合の厚生水準と中間財のみが貿易される場合の厚生水準の比較など)が可能となった。 3.本年度はさらに、本研究テーマである生産の外部性と国際貿易の理論分析の一環として、グローバルな環境汚染をともなう国際貿易モデル及び今後規模の経済性を導入することにより拡張を試みる予定の寡占的競争をともなう国際貿易モデルについて分析を進めた。これらの研究成果は"An Analysis of Transboundary Pollution and the Gains from Trade : Reconsideration," Pacific Economic Review (forthcoming)及び「寡占的競争下の国際貿易」,『経済科学』第53巻第1号(2005年6月発行予定)にまとめられている。 以上の分析結果はすべて要素代替をともなわない国際貿易モデルにおいて得られたものである。しかし、本年度の研究を通して、一要素モデルにおける本研究のさらなる発展可能性を示すことができたといえる。
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