2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J05608
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奈良間 千之 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 最終氷期の氷河前進期 / OSL年代測定法 / 近年の氷河縮小 / 衛星画像処理 / 地球温暖化 / 氷河の融氷水の変化 / 氷河のマスバランス / キルギス共和国 |
Research Abstract |
2004年6月〜7月と10月に中央アジアのキルギス共和国北部,テルスケイアラトー山脈において氷河の融解量調査をおこなった.河川の流量観測所に電気伝導度,氷河前面に気象観測測器(気温,降水量,日射,放射収支,アルベド,地温,風速)を設置した.また,10月にはGPS測量を氷河上でおこなった.夏季の4ヶ月間のデータ解析から,研究対象とした流域には13%の氷河面積しかないにもかかわらず,夏季の氷河からの融氷水の河川流量に対する貢献度は,最大時で30〜40%を占めていることが明らかになった.現在,現地測候所の観測された気温は上昇傾向を示し,氷河も縮小している.河川流量に対する氷河からの融氷水の貢献度は大きいため,今後予想される氷河縮小による河川流量への影響をさらに調査していく必要がある.この結果は3月の日本地理学会で発表した. また,テルスケイアラトー山脈西部の過去30年間の氷河面積の変化について,衛星画像のASTERとCoronaを使用し,氷河の面積変化を求める研究をおこなった.1971年〜2001年の30年間で,氷河面積は全体の7%縮小していた.全体の氷河面積の28%しかない面積1km2以内の小規模な氷河の縮小面積に対する貢献は40%もあり,小規模な氷河が現地の気候に敏感に反応し,縮小への貢献度が大きいことが明らかになった.この結果は,2月にスイスのベルン大学で開催されたヨーロッパリモートセンシング学会の雪氷グループの研究会で発表した.この内容は,ヨーロッパリモートセンシング学会の雑誌に投稿中である. 4〜5月にOSL年代測定をおこない,テルスケイアラトー山脈山麓に形成されたモレーンが2万年前の最終氷期後半の氷河拡大によって形成されたことが明らかになった.この結果は5月の地球惑星合同大会で発表した.さらに,10月に下流部のモレーンを対象にOSL年代試料を採取し,現在測定中である.
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