2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J05768
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
矢ヶ崎 琢磨 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 超臨界水 / QM / MM法 / 水和 / 電荷移動 |
Research Abstract |
水中の化学反応において最も重要な量の一つが水のイオン積pK_wである。pK_wは温度・圧力などの熱力学条件により大きく変化し、これは水中の化学反応の機構に大きな影響を与える。常温で14であるpK_wは温度上昇に伴い減少し、そのあと急激に増加する(550KでpK_w=11、800Kでは21)。このpK_wの値は、水の自己解離反応の生成物であるH_3O^+とOH^-が水和によりどの程度安定化されるのか、すなわちこれらのイオンの水和自由エネルギーにより決定される。この水和自由エネルギーの計算は、OH^-の水和構造の再現の困難、電荷移動や分極の効果、長距離におよぶ水-イオン間のクーロン相互作用などのために、従来、非常に難しいとされていた。本研究では、量子化学計算と分子力場法を組み合わせたQM/MM法を用いることにより、水中のイオン、さらにはその近傍の水分子の電子状態を精度良く再現した。本研究ではこのQM/MM法を組み込んだ分子動力学法で水和自由エネルギーを計算することにより、わずかに臨界点より大きな圧力下において、きわめて実験に近いpK_wの温度依存性(300K〜800K)を再現することに成功した。この計算では自由エネルギーだけでなく、水和のエネルギー、エントロピー、体積変化も計算し、水の解離の自由エネルギーの温度依存性に対してそれぞれがどのように寄与するかを調べた。また、イオンの周り(特にOH^-)の水和構造、常温でイオンが引き起こすstructure making/breaking、超臨界での局所的な溶質周辺での密度増加などを詳細に解析し、これらと熱力学量との関係を明らかにした。さらに溶質であるイオンとその周囲の水の電荷を調べ、高密度の常温では、イオン-水間の電荷移動だけでなく水-水間の電荷移動が引き起こされ、電荷移動が極めて長距離に及ぶことを明らかにした。
|
Research Products
(1 results)