2004 Fiscal Year Annual Research Report
EBV潜伏感染Bリンパ球細胞株における溶解感染誘導と宿主細胞周期制御機構の解析
Project/Area Number |
04J05815
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
工藤 あゆみ 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Epsteir-Barr Virus / 溶解感染 / DNA損傷チェックポイント / ATM / Chk2 / BZLF1 / 細胞周期制御 / p53 |
Research Abstract |
多細胞生物は細胞周期を通してゲノムDNAの損傷や複製障害をDNA損傷チェックポイント制御機構で監視している。本年度は、Epstein-Barr Virus (EBV)溶解感染期にウイルスゲノム複製が、DNA損傷チェックポイント機構に与える影響を解析した。 ATMやATRはプロテインキナーゼで、DNA損傷によって活性化され下流分子をリン酸化する。EBV溶解感染を誘導した細胞では、ATMが自己リン酸化するATMのSer-1981がリン酸化され、ATM下流であるChk2のThr-68がリン酸化されていた。一方で、ATR経路の標的であるChk1のSer-345のリン酸化は認められなかった。 ATM経路はDNA二本鎖切断部位で、ヒストンH2AXのSer-139をリン酸化する。このDNA損傷部位には、Mre11-Rad50-Nbs1複合体がフォーカスを形成することが知られる。溶解感染誘導後は、ヒストンH2AXのSer-139のリン酸化が認められ、細胞核内でEBVゲノムとATMの活性型が共局在し、Nbs1やMre11がEBV複製領域上に局在した。よって、EBVゲノム複製はATM経路を活性化させる構造を持つことが推察される。 チェックポイント制御では、p53たんぱく質の安定化による蓄積が重要である。溶解感染誘導後の細胞では、p53のSer-15のリン酸化が確認されたが、p53の蓄積や、下流であるp21^<waf1/cip1>の誘導も認められなかった。また、EBV溶解感染誘導系を用いた解析から、BZLF1とp53が免疫沈降により共沈すること、EBV複製領域上にBZLF1とp53が共局在することがわかった。以上により、溶解感染期におけるATM-Chk2-p53経路によるシグナルは、BZLF1たんぱく質がp53と結合することで阻害され、EBVゲノム由来遺伝子産物の発現に有利にCDK活性が保たれるのである。
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Research Products
(1 results)