2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J05887
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Research Institution | Nagoya University |
Research Fellow |
左右田 稔 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | コバルト酸化物 / スピン状態 / 中性子散乱 / 磁気構造 |
Research Abstract |
酸化物中のCoイオンのスピン状態(電子状態)は局所構造に敏感で温度の変化によってもしばしば移りかわることが特徴で、その物性もそれに伴って多様に変化する。酸素欠損型ペロブスカイト酸化物RBaCo_2O_<5+δ>(R=Y、希土類等)では、δの違いにより、Coまわりの酸素配列が変化する。δ=0.5ではCoO_6八面体とCoO_5ピラミッドがb軸方向に交互に並んでいるが、δ=0.0ではそれが全てCoO_5ピラミッドに置き換わる。その構造の違いにより磁性や伝導の振舞が異なるが、そのときの局所構造とCoスピン状態の関係も注目される。 Coスピン状態と局所構造の関係を明らかにするために、以前TbBaCo_2O_<5.5>単結晶を用いた中性子散乱実験を行った。磁気構造を解析したところ、CoO_6八面体内のCo^<3+>はスピンSがないlow spin (LS)状態、CoO_5ピラミッド内のCo^<3+>はS=1のintermediate spin (IS)状態にあることがわかった。今回はさらなる情報を得るために、NdBaCo_2O_<5.5>単結晶を用いた中性子散乱実験を行った。磁気構造を解析したところ、CoO_6八面体内のCo^<3+>は高温(30K<T<170K)ではIS状態で、温度を下げるとLS状態に近づく。CoO_5ピラミッド内のCo^<3+>はS=2のhigh spin (HS)状態であった。 これらの結果は、Coのスピン状態は酸素の局所配列だけでなく、Rのイオン半径r_Rにも依存することを直接的に示したものである。r_Rが小さいとき、CoO_6(CoO_5)内のCoはLS(IS)状態が安定になり、r_Rが大きくなるとCoO_6(CoO_5)内のCoはIS(HS)状態がより安定になる。これは、局所構造の違いや、r_Rの違いによって生じる八面体やピラミッドの大きさの違いにより、Co位置での結晶場が異なるからと理解される。
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Research Products
(4 results)