2004 Fiscal Year Annual Research Report
植物のメリステム構築・維持と細胞分裂制御の関わりの分子遺伝学的研究
Project/Area Number |
04J05969
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲垣 宗一 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 植物 / シロイヌナズナ / メリステム / 形態形成 / 細胞周期 / DNA修復 / チェックポイント |
Research Abstract |
シロイヌナズナのTEBICHI (TEB;旧名SS93)遺伝子はショウジョウバエのmus308のホモログで、DNAヘリカーゼとポリメラーゼのドメインを併せ持つタンパク質をコードし、TEB遺伝子を欠損したteb突然変異株は、メリステムの構造に異常をきたし、短い根、葉の形態異常、花茎の帯化などの表現型を示す。動物のホモログの欠損株と同様に、tebはDNA損傷剤に高感受性を示し、通常状態で、DNA二本鎖切断に応答して発現する遺伝子の発現上昇が見られたことから、TEB遺伝子は動物のホモログと同様にDNA損傷の修復もしくは損傷に対する何らかの応答に関わっていて、tebではDNA二本鎖切断が増加していると考えられた。TEB遺伝子の変異とメリステムの構造・機能欠損の関わりを調べるために、以下の実験を行った。まず、tebにおいて、他の形態類似変異株と同様に遺伝子サイレンシングの解除が起きているかを調べた。その結果、他の変異株と異なり、tebでは、遺伝子サイレンシングの解除が起きていないことが分かった。次に、tebや類似変異株のメリステムにおけるcyclinB1::GUSの発現の観察や、マイクロアレイ解析などより、tebではDNA複製の進行が阻害されて、有糸分裂期(M期)への進行が阻害されていること、また他の変異株でも細胞レベルで同様の異常が起きていることが分かった。また、形質転換体をつかった解析より、tebにおける複製中の相同組換え頻度を測定した結果、野生株より組換え頻度が低下していることが分かった。これらの結果より、teb変異株では複製中の相同組換えが正常に行われない結果、DNA複製の進行に異常をきたし、M期進行が阻害されていると考えられた。植物の正常な発生には細胞周期と発生プログラムの密接な関連が重要であると考えられ、TEB遺伝子はこの関係に重要な役割を担っていると考えられる。
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