2005 Fiscal Year Annual Research Report
植物のメリステム構築・維持と細胞分裂制御の関わりの分子遺伝学的研究
Project/Area Number |
04J05969
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲垣 宗一 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 植物 / シロイヌナズナ / メリステム / 形態形成 / 細胞周期 / DNA修復 / DNA複製 / チェックポイント |
Research Abstract |
シロイヌナズナのTEBICHI(TEB)遺伝子は、DNAヘリカーゼと、ポリメラーゼのドメインを併せ持つタンパク質をコードし、teb突然変異株は、メリステムの構造に異常をきたし、短い根、葉の形態異常、花茎の帯化などの表現型を示す。teb変異株は通常状態で、DNA二本鎖切断に応答して発現する遺伝子の発現上昇を示し、また、teb変異株のメリステムにおいてG2/M期のマーカーであるcyclinBi::GUSを発現している細胞の増加が見られたことから、teb変異株ではDNA修復の異常から細胞周期チェックポイントを活性化し、有糸分裂期(M期)への進行が阻害されていると考えられる。さらに、teb変異株とDNA複製チェックポイント機構に関わるATR遺伝子の破壊株の二重変異株は、cyclinB1::GUSの発現の増加は示さないのに対し、tebの形態異常は亢進することが明らかになった。この結果より、teb変異株はDNA複製の異常に伴うATR依存的チェックポイントを活性化していること、tebの形態異常は細胞周期進行の異常よりむしろ、DNA複製の異常そのものが深く関わっていることが示唆された。teb atr二重変異株の詳細な解析より、teb atr 二重変異株は高頻度に針状の葉を形成することが明らかになった。針状の葉は、葉の表裏軸が欠損したときに現れる表現型であることが知られており、teb atrおよびteb変異株において葉の表裏軸が異常になっていることが期待されたので、teb変異株において、葉の裏側で発現する遺伝子であるFILAMENTOUS FLOWER(FIL)の発現を解析したところ、teb変異株においてFILの発現が葉の表側に広がっていることが分かった。これらのことからtebやteb atr変異株におけるDNA複製の異常が葉原基細胞の表側細胞への分化に影響を与えていることが示唆された。
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