2004 Fiscal Year Annual Research Report
亜鉛の多角的な作用による興奮性ニューロンの抑制とその機構解析
Project/Area Number |
04J05985
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
南 彰 静岡県立大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 亜鉛 / 生体微量金属 / 神経伝達調節因子 / 海馬 / グルタミン酸 / シナプス可塑性 / カルシウム |
Research Abstract |
亜鉛は脳の発育、機能に必要な生体微量金属であり、その代謝異常は脳疾患の発症や進行と関係する。海馬は学習・記憶を司るが、そのメカニズムにはシナプス可塑性(シナプス伝達効率の長期増強(LTP)など)が関与すると考えられている。歯状回顆粒細胞由来の苔状線維終末(苔状線維-CA3錐体細胞)でのLTPは、苔状線維終末からのグルタミン酸放出量が増加することに起因する。したがって、グルタミン酸の放出調節機構は、海馬におけるシナプス可塑性を理解する上で重要である。苔状線維のシナプス小胞には亜鉛が高濃度(約300μM)で存在するが、この亜鉛の役割は十分には明らかにされていない。インビボマイクロダイアリシス法で苔状線維終末が分布する透明層に亜鉛を添加すると、細胞外グルタミン酸濃度が低下することから、亜鉛がグルタミン酸放出を抑制することが考えられる。グルタミン酸の開口放出は細胞内カルシウム濃度の上昇により開始される。そこで、海馬スライスを用いて苔状線維終末に亜鉛とカルシウムの蛍光プローブを選択的に取り込ませ、LTP誘導に用いられる100Hz、1秒間の電気刺激を歯状回顆粒細胞に与え、苔状線維終末のカルシウム濃度上昇に対する亜鉛の作用を検討した。その結果、亜鉛は苔状線維終末のカルシウム濃度上昇を抑制した。さらに、開口放出検出用の蛍光プローブを用いた検討から、亜鉛が開口放出を抑制することが示唆された。苔状線維から放出された亜鉛は電位依存性カルシウムチャネルの抑制などを介して苔状線維終末のカルシウム濃度上昇を抑制し、グルタミン酸の開口放出を抑制することが示唆された。また、苔状線維終末に再取込された亜鉛が開口放出を抑制することも示唆された。
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Research Products
(4 results)