2004 Fiscal Year Annual Research Report
気候変動、社会変化に対する大規模灌漑農地の受容度の動的分析
Project/Area Number |
04J06155
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
長野 宇規 総合地球環境学研究所, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 灌漑効率 / 大規模灌漑農地 / トルコ / 塩害 / 気候変動 / 水収支 |
Research Abstract |
トルコ共和国の中央南部に位置するSeyhan河流域の河口部には13万haの灌概農地(Lower Seyhan Irrigation Project)が展開している.一帯は地中海性気候に属し,北部の山地からの流出を巨大ダムに貯水して,夏期に灌漑農業が営まれている.灌漑網は1960年代から1990年代初頭にかけて整備が進められたが,デルタ末端の海岸地帯については未だに未整備で,農民は水質の悪い排水路の水を灌概に用いて塩害の被害が出ている. トルコでは,1996年から国営組織の経費節減の一環として,末端の灌漑管理が水利局から農民の水管理組織に委譲され,土地利用も従来の綿花のモノカルチャーが企業的果樹園経営やハウス栽培などに多角化するなど,社会構造変化に応じて既存の管理システムは大きく変貌しようとしている.気候モデルによると,将来的にこの地域の水資源は減少することが予測されており,用水の逼迫も予想される.この灌漑農地の気候変動,社会変化への受容度を分析することが本研究の課題である. 平成16年度は灌漑農地の3次水路レベルの水管理の実態調査と下流部塩害地の踏査を行った.前者においては,老朽化した灌漑水路の送水損失率は35-45%とコンクリート製水路としては極めて大きく,農民は今まで豊富な水資源に恵まれてきたためか,水管理において節水への取り組みを殆どしていないことも明らかになった.後者においては,デルタ末端の塩害地の分布が明らかにし,今後の塩分挙動の監視体制を確立した. 一方で,灌漑地の分布型水収支モデルを用いて,水管理の変化が地域の水収支に与える影響について検証を進めている.2070年代の疑似温暖化データを用いたシミュレーションに現在取り組んでいる.
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Research Products
(5 results)