2004 Fiscal Year Annual Research Report
戦後沖縄の出生力転換と女性たちの交渉-出生力要因のジェンダー分析にむけて-
Project/Area Number |
04J06196
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
澤田 佳世 お茶の水女子大学, ジェンダー研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 沖縄 / 生殖の政治 / 出生 / 人口政策 / 家族計画 / リプロダクティブ・ヘルス / ライツ / 米軍統治 / 人口問題 |
Research Abstract |
今年度は、米軍統治下沖縄の出生力転換について出生抑制の需要とその手段、及び人口と生殖をめぐる政治のありようを中心に研究し、それを人口学とジェンダー研究の分野で論文として発表した。今年度の補助金は、主に上記の研究を遂行するための沖縄現地調査の旅費と人口転換・生殖関連の文献の購入費に当てられた。予定していた米国での資料収集は2005年4月に遂行する。 1.戦後沖縄の出生抑制に対する需要とその手段に関しては、人口学の分野で、「米軍統治下沖縄の出生力とその抑制手段の転換」(校正中)、「ヤミ中絶から避妊へ」の二論文を発表した。これは、優生保護法が制定されず中絶や避妊が法的に禁止される中、米軍統治下の沖縄では女性の社会経済的地位の変動に伴う少産動機の出現と米兵相手の売買春・強姦による望まない妊娠の発生を背景に、日本の出生力転換とは同一視できない出生抑制に対する需要と手段、その転換過程があったこと指摘するものである。この論文の内容を基に日本人口学会で発表した。 2,沖縄の人口と生殖をめぐる政治については、ジェンダー研究の分野で、「米軍統治下沖縄の助産婦による避妊普及活動とその変容」(近刊)、「戦後沖縄における『リプロダクティブ・ヘルス/ライツ』の萌芽」の二論文を発表した。これらは、米軍統治下沖縄で1960年代半ばに避妊が普及した背景に注目し、助産婦の避妊普及活動をローカルな文脈で織り成されたリプロダクティブ・ヘルス/ライツ概念の萌芽と捉え、避妊が普及する過程でその概念が家族計画運動へと回収されていく諸相を分析したものである。この論文の執筆に先立ち、リプロダクション情報・政策研究会で発表した。 なお、戦後沖縄の家族計画について、米国や国際組織の極東の「人口問題」への関心に焦点をあて、沖縄の人口をめぐる地域的・国家的・国際的諸アクターの利害関係という視点から分析した論文を現在執筆中である。 (796字)
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