2005 Fiscal Year Annual Research Report
企業の製品差別化戦略と製品の品質に対する消費者意識の関係
Project/Area Number |
04J06306
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
荒川 潔 九州大学, 大学院・経済学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 製品差別化 / 消費者行動 / 宣伝 |
Research Abstract |
今年度は消費者が商品の性質に関する事前知識を持たない場合に,商品情報がどのように消費者に伝達されるのかを明らかにするための理論モデルを構築した.商品情報の伝達には,(1)消費者が費用を負担し情報を入手する,(2)商品の売り手が費用を負担し消費者に情報を与える,(3)消費者と商品の売り手がともに費用を負担し消費者が商品情報を入手する,の3つが考えられる.まず(1)は消費者が書籍を購入したり専門家に意見を求める場合に相当し,これはStigler(1962)にはじまるサーチ理論と同一のものであり,既に理論体系が確立している.(2)は商品の売り手が行う宣伝に相当するものであり,既に様々な理論が提案されている.Anderson and Renault(2006)は(1)と(2)の両方を同時に分析するモデルを提案し,部分的な商品情報が開示される均衡が存在することを明らかにした.(3)は売り手の宣伝が載せてある雑誌を消費者が購入する場合を表している.この場合は宣伝がない場合に比べ,雑誌の値段,つまりサーチ費用は低下している.言い換えれば,商品の売り手は消費者のサーチ費用に補助を与えているとも考えることができる.本研究の目的はこれまでになかったこの考え方をモデル化することにある. 既存の研究においては、商品情報の伝達は(1),(2)の両方の場合において社会的に過剰であるとの結論が多く出されている.しかしながら,(3)においては,全てのプレイヤーが費用を負担するのであるから,商品情報の伝達は社会的に最適である可能性があり,本研究ではこのことを分析する.さらに,(1)と(2)の考え方を考慮しモデルを構築すれば,どのような経済状況のときに,どのような商品情報の伝達が行われるのか,そしてそれが社会にどのような影響を与えるのかを理解できることになる. 現在は基本的な理論モデルが完成しており,来年度はそれを精緻化し,雑誌に投稿する予定である.
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