2006 Fiscal Year Annual Research Report
企業の製品差別化戦略と製品の品質に対する消費者意識の関係
Project/Area Number |
04J06306
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
荒川 潔 九州大学, 大学院経済学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 製品差別化 / 消費者行動 / 宣伝 |
Research Abstract |
今年度は消費者が商品性質に関する不完全な事前知識を持つ場合に,消費者が商品情報を求めて行うサーチと,企業の商品価格戦略と商品情報を伝達する宣伝の戦略を分析するための理論モデルを構築した.商品情報の伝達には,(1)消費者が費用を負担し情報を入手する,(2)商品の売り手が費用を負担し消費者に情報を与える,(3)消費者と商品の売り手がともに費用を負担し消費者が商品情報を入手する,の3つが考えられる.まず(1)は消費者が書籍購入や専門家に意見を求める場合に相当し,(2)は商品の売り手が行うテレビなどでの宣伝に相当するものである.(3)は売り手の宣伝が載せてある雑誌を消費者が購入する場合などを表している.この場合は,宣伝がない場合に比べ,雑誌の値段,つまりサーチ費用は低下している.言い換えれば,商品の売り手は消費者のサーチ費用を低下させるよう補助しているとも考えることができる.本研究では,消費者の事前の情報量が増大した場合の企業の価格と宣伝戦略と,消費者や社会の厚生の変化を分析した. 本研究で明らかにした結論は以下の通りである.まず,サーチコストの増大は必ずしも消費者の厚生を低下させないことが明らかとなった.これは,サーチコストが増大すると,企業が消費者にサーチさせるために価格を下げる場合があるからである.そして,消費者が多くの事前情報を持つ場合には,正のサーチコストが存在する場合に社会厚生が最大となることが明らかとなった.しかしながら,消費者の事前情報量の増大は,必ずしも消費者の厚生を増大させないことが分かった.なぜなら,消費者の事前情報量が増大すると,消費者の財への支払い意志額が増大するため,企業は消費者にサーチさせるために価格を下げる必要がないからである.さらに,消費者が多くの事前情報を持つ場合にだけ,企業が宣伝を行うことが明らかとなった.そして,宣伝が行われると,消費者と社会の厚生は低下することが明らかとなった.
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