2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J06407
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
一木 良子 独立行政法人国際農林水産業研究センター, 生産環境領域, 特別研究員(日本学術振興会)
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Keywords | ヤドリバエ / 捕食寄生 / 生物的防除 / 3者系 / 寄主探索 / 害虫防除 / 天敵 / 色覚 |
Research Abstract |
農林害虫の捕食寄生性天敵であるヤドリバエは、化学農薬に比べ、人畜や生物、環境にやさしい生物的防除資材として高い効果が期待される。本研究では、ヤドリバエの生活史、寄主探索機構および寄主制御機構を包括的に解明し、生物的防除資材としてのヤドリバエの有効性と限界を評価することを目的とする。 本年度は、ヤドリバエの寄主探索機構について重点的に研究を行い、以下のような成果を得た。寄主であるアワヨトウに加害された植物の匂いに誘引されることが知られているブランコヤドリバエを用いて、植物探索における視覚刺激(色の効果)の重要性を検証した。風洞の風上に置いた加害トウモロコシ株をメッシュスクリーンで目隠しし、その手前(風下側)に紙で作った植物モデル(緑、黄、赤、青)を置いた。そして、風下から交尾雌を放し、各モデルへの到達率を比較した。その結果、緑への到達率が最も高く、次いで黄、青、赤の順であった。加害植物の匂いを充満させたケージ内に、4色のモデルを置きハエに選択させた場合も、緑が最も選ばれる割合が高かった。次に、緑と明度が同程度の灰色モデルと緑色モデルに対する反応を比較したところ、灰色よりも緑色への到達率が有意に高かった。従って、ブランコヤドリバエの雌は、緑色の植物モデルを認識し、選好すると考えられた。緑色モデル単独、および目隠しした健全株+緑色モデルに対する反応は低かったことから、ブランコヤドリバエの寄主探索には、植物由来の揮発性成分と植物の緑色の両方が寄主の餌植物を探す手がかりとして重要な役割を持つことが明らかとなった。ヤドリバエが植物の色を認識できることを実証したのは今回が初めてである。この成果については、既に日本応用動物昆虫学会で発表しており、近く学術雑誌に投稿する予定である。 また、この他に2種のヤドリバエについて、野外における寄主探索行動、およびハエの幼虫発育と温度の関係を調査した結果を、それぞれ学術論文にまとめ、現在投稿中である。
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