2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J06437
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Research Institution | Kyushu University |
Research Fellow |
船橋 篤彦 九州大学, 人間環境学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 乳児 / 移動運動発達 / 発達の相互性 / 運動障害 / 発達支援 |
Research Abstract |
本研究は、運動発達を単純な身体の成長過程としてではなく、「心」の発達と深く関連したものとして捉える立場である。とりわけ、生後8ヶ月近辺に獲得される移動運動発達に注目し、移動獲得に伴う様々な心理的変化を実証的に明らかにすることを第一の研究課題としている。平成16年度は、移動獲得期にある乳児の空間認知能力に関する実験を行い、乳児は生後8ヶ月頃に効率的な視覚的注意を獲得することを明らかにした。また、乳児の移動獲得に伴う養育者の変化が乳児の社会的発達を促進するといった先行知見を詳細に検討する為、数十名の母子を対象に生後6ヶ月から10ヶ月までの母子相互作用を縦断的に観察した。その結果、乳児の移動獲得に伴い、母子相互作用の形態(身体距離や対面頻度)が変化することが明らかになりつつある。現在、本データを用いた論文を準備中である。 次に本研究の第2の研究課題として、運動発達を中核に据えた発達の相互性という見地から、運動障害のある人達への発達支援法の構築がある。研究の第1課題が人間の発達メカニズムを明らかにする試みと位置づけると、この第2課題は第1課題で得られた知見の妥当性と社会的貢献度を見極める試金石であると言える。平成16年度は、運動障害や知的障害のある人達に対して、動作発達支援を行い、心理面の変化について詳細な検討を行った。その結果、障害のある人達も、動作発達に伴い、他者への関心や社会的行動の獲得といった心理的側面に大きな変化が生じることが明らかになった。このことは、従来のリハビリテーションが身体機能の向上を重視し、障害のある人達の「発達的変化」という側面への注目が相対的に希薄であったことを明らかにしたと考える。 以上、本研究は発達の基礎的メカニズムの検討とその臨床的応用の2つの研究課題について一定の成果を得た。平成17年度は、より精緻な実験的検討と臨床的応用を行うこととしたい。
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Research Products
(3 results)