2004 Fiscal Year Annual Research Report
耐塩性乳酸菌分子シャペロンの機能発現によるスーパーストレス耐性生物の分子育種
Project/Area Number |
04J06799
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉本 真也 九州大学, 農学研究院・生物機能科学部門, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 耐塩性乳酸菌 / ストレス耐性 / 分子シャペロン / 分子育種 / 微生物工学 / 分子生物学 |
Research Abstract |
本研究では、古来より発酵食品に利用され安全性の高い乳酸菌、特に醤油・味噌の醸造過程において利用されてきた耐塩性乳酸菌Tetragenococcus halophilusが保持する分子シャペロンに着目し、その機能を調べるとともに、ストレス耐性生物創生への応用を目指している。 まずT.halophilus GroEL (TGroEL)の機能をin vitroにおいて調べた。組換え体大腸菌による高発現系を用いてTGroELを調整したが、TGroELはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)解析においてモノマー状態であったので、MgATPおよび硫酸アンモニウムの存在下で多量体への再構築を行った。SEC解析および電子顕微鏡解析の結果、再構築した多量体TGroELは7つのサブユニットから成るドーナツ状の環が二つ逆向きに重なった14量体の4次構造を形成していることが示された。 このTGroELの14量体は変性エノラーゼの酵素活性を効率よく回復させた。さらに野生型大腸菌にTGroEL遺伝子を導入したところ、宿主の耐塩性が向上した。以上より、TGroELは宿主の耐塩性にタンパク質の保護や再生の機能を介して重要な役割を果たしており、これら分子シャペロンの機能発現によりストレス耐性生物の分子育種が可能であることが示された。 次に、凝集タンパク質の可溶化と再フォールディングに重要な分子シャペロンClpB (TClpB)遺伝子のクローニングおよび組換え大腸菌内での大量発現を行った。精製したTClpBは他の細菌で見られるような6量体構造ではなく、2量体構造をとっていた。現在、機能的な6量体構造への再構築とin vitroでの機能解析を行っている。 今後さらに、複数の分子シャペロンの機能解析を行うとともに、これらの機能発現によるストレス耐性生物の分子育種を目指す。
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