2006 Fiscal Year Annual Research Report
耐塩性乳酸菌分子シャペロンの機能発現によるスーパーストレス耐性生物の分子育種
Project/Area Number |
04J06799
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉本 真也 九州大学, 大学院農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分子シャペロン / タンパク質フォールディング / 耐塩性 / 乳酸菌 / ストレス耐性 / 分子育種 |
Research Abstract |
耐塩性乳酸菌Tetragenococccus halophilus由来の種々の分子シャペロンの構造および機能の詳細を明らかにした。T.halophilus ClpB (ThaClpB)に関しては、精製タンパク質を用いた生化学的解析結果より、ThaClpBの4次構造が熱や塩などの環境ストレス、あるいはATPの結合により変化し、それに伴い機能が変化することを明らかにした(J.Bacteriol.2006)。次に、T.halophilus DnaK (ThaDnaK)と大腸菌由来DnaKの機能を比較しながら、ThaDnaKの分子機構を明らかにした。一般的にDnaKはコシャペロンDnaJ、GrpEによりATP加水分解サイクルが活性化され、それに伴う構造変化により基質タンパク質との結合・解離を繰り返し、効率よく基質タンパク質のフォールディングを行う。しかし、精製タンパク質を用いたATPase活性測定、変性タンパク質リフォールディング活性測定および表面プラズモン共鳴バイオセンサーによる相互作用解析の結果から、ThaDnaKは大腸菌とは異なりDnaJおよびGrpEと協調的に機能しないことが示唆された。このような特性は他の乳酸菌にも見られ、大腸菌などに比べて乳酸菌のシャペロン機能は弱いことが示唆された(J.Bacteriol.へ投稿中)。さらに、大腸菌などのグラム陰性細菌にはT.halophilusやその他グラム陽性細菌にはない23アミノ酸残基の挿入配列がDnaKのATPaseドメインに存在し、その部位がDnaJおよびGrpEと協調的に機能する上で重要であることを示した(FEBS Lett.へ投稿中)。 上記の成果より、乳酸菌の分子シャペロンシステムをより強力・高効率なものへと改変することで、高いストレス耐性能を有する有用乳酸菌の分子育種が可能であると考えられた。そこで、乳酸発酵、バクテリオシン生産などにおいて使用されてきた乳酸菌Lactococcus lacis subsp.lactisをモデルとし、分子シャペロンの機能強化によるストレス耐性能の向上を目指した。ThaDnaK発現株と大腸菌DnaK発現株についてはすでに構築済みであり、現在DnaK以外の分子シャペロン発現株および複数の分子シャペロン共発現株を構築している。これら分子シャペロン機能強化株のストレス耐性能および発酵生産性の向上が期待される。
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