2005 Fiscal Year Annual Research Report
担子菌による芳香族ニトロ化合物代謝機構の解明:遺棄化学兵器処理に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
04J06807
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Research Institution | Kyushu University |
Research Fellow |
寺本 寛 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 芳香族ニトロ化合物 / 白色腐朽菌 / プロテオーム解析 / リグニン分解 |
Research Abstract |
昨年度までの研究により芳香族ニトロ化合物の分解は低窒素下にて促進されることが示された。つまり、各培養条件における担子菌の細胞応答機構の解明は、実プロセスに向けて重要な基礎データの獲得につながると考えられた。 Phanerochaete chrysosporiumをKirk液体培地(HCHN;28mMグルコース,24mM,N,HCLN;28mMグルコース,2.4mM,N)にて培養した。N源として、酒石酸アンモニウム等(計5種)を用いた。各条件下で4日間培養後、調製した細胞外タンパク質を二次元電気泳動に供したところ、発現パターンが大きく異なった。MALDI-TOF-MS解析で得たペプチドフィンガープリントを用いて、P.chrysosporium in silico protein databaseに対してMASCOT検索することでタンパク質を同定した。LN下では、マンガンペルオキシダーゼ、リグニンペルオキシダーゼや細胞外過酸化水素供給系と考えられているglyoxal oxidase、aryl-alcohol oxidase等が同定された。またN源によらず、全てのLN条件下にてリグニン分解酵素の誘導が確認された。HN下では、有機酸およびアミノ酸代謝に関わる酵素や糖質代謝関連酵素等、LNでは発現していないスポットが数多く検出された。HN下で共通して発現量の高いスポットとしてendo-β-1,3(4)-glucanase、exo-β-1,3-glucanaseが同定された。担子菌細胞壁および細胞外マトリックスはβ-1,3-glucanを主成分とするため、これらの酵素は細胞外マトリックス(グルカン層)の代謝に関わったと予想された。HN下ではLN下よりグルコースが速やかに減少し、3日目で消失した。すなわち、試料を調製した時点ではグルコースが枯渇している。このため、C源枯渇時に貯蔵多糖としてのβ-glucanをC源として再利用したと考えられた。HNで同定された糖質関連酵素は、植物細胞壁成分や種々の多糖等、培地中に存在しないものをターゲットとするものを含んでいた。したがって、P.chrysosporiumはHNにおいて引き起こされるC源枯渇への適応戦略として、オルタナティブ糖質代謝系を活性化したと考えられた。本菌は窒素濃度を感知する能力を有し、各条件に応じて代謝システム変化させることが示された。
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