2004 Fiscal Year Annual Research Report
管理放棄されたヒノキ人工林小流域における物質収支の定量的把握と自然浄化機能の検討
Project/Area Number |
04J06809
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Research Institution | Kyushu University |
Research Fellow |
井手 淳一郎 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 懸濁態リン / 先行降雨指標(API) / ヒノキ人工林 / 面源 / 半経験式 / 御手洗水試験流域 |
Research Abstract |
下層植生が貧弱でリター層の発達が不十分な森林生態系では,頻発する表土流亡により多量の栄養塩が系外に流出することが懸念されるため,その流出負荷量を把握する必要がある。しかし,多量必須元素の一つであるリンは土粒子に吸着した懸濁態リンとして降雨時に集中して流出するため,一般的な評価法であるL-Q式による流出負荷量の評価が難しい。本研究では,下層植生の貧弱なヒノキ人工林流域における水質・水文観測の結果を踏まえた,懸濁態リンの流出負荷量推定モデルについて検討した。 現地観測の結果,降雨時における懸濁態リンの流出特性について次の2点が明らかとなった。 (1)単位時間当りの流量の変化割合(ΔQ/Δt ; t:時間,Q:流量)が大きい程,懸濁態リンの供給割合(ΔL/Δt ; L:流出負荷量)は大きい。(2)先行無降雨期間が長いほど,すなわち,森林流域の土壌が乾燥している程,降雨イベントにおける単位流量当りの供給割合(ΔL/ΔQ)の最大値は大きい傾向にある。 モデルは上記2点の流出特性を反映させた。さらに,(3)懸濁態リンの供給能力(ΔL/ΔQ)は降雨イベント開始時に最大であり,その後流量の増加とともに減少していくと想定した。なお,(2)の先行する土壌水分状態を表すために先行降雨指標(API)を用いた。このAPIを基に各イベントにおける懸濁態リンの初期供給能力を決定した。モデルを5回の降雨イベントに適用した結果,モデルはL-Q式よりも実測値と適合した。推定値と実測値との絶対誤差の平均値はL-Q式で4.1×10^<-5>kg・ha^<-1>・10min.^<-1>,モデルで1.0×10^<-5>kg・ha^<-1>・10min.^<-1>であった。また,モデルはイベント初期のフラッシング効果壷上手く再現した。 本研究で作成した懸濁態リンの流出負荷量推定モデルはAPIと併用することにより,L-Q式では再現できなかった降雨イベントの違いによるL-Q関係の違いやフラッシング効果を再現可能であると考えられる。
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Research Products
(3 results)