2005 Fiscal Year Annual Research Report
管理放棄されたヒノキ人工林小流流における物質収支の定量的把握と自然浄化機能の検討
Project/Area Number |
04J06809
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Research Institution | Kyushu University |
Research Fellow |
井手 淳一郎 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 窒素飽和 / DIN:ON比 / 溶存有機態窒素 / 飽和帯地下水 / 硝酸態窒素 / ヒノキ人工林 / 御手洗水試験流域 |
Research Abstract |
近年,大気から負荷される窒素化合物が森林の窒素循環に与える影響として窒素飽和が注目されているが,生態系における窒素状態が過剰であるか否かの判断は難しい。本研究では,ヒノキ人工林流域における窒素状態の把握を目的として,林外雨,林内雨,樹幹流,地下水,渓流水の水質水文観測結果を基に,(1)無機態窒素(DIN:NO_<3^->+NH_<4^+>)の物質収支と(2)無機態窒素(DIN)と有機態窒素(ON)の年流出量の比(DIN:ON比)を評価した。ここで,DIN:ON比は生態系の窒素状態を把握する新たな指標として提案されているが,日本の人工林流域に適用可能であるか否かは検討の余地がある。したがって,本研究では(3)DIN:ON比の妥当性についても検討した。 研究実績の概要は以下のとおりである。 1.林外雨によるDIN沈着量は10kgNha^<-1>yr^<-1>を超え,他流域における報告例と比較して高いことが示された。 2.林床へのDIN沈着量(林内雨+樹幹流)は林外雨によるそれと比べて増加しており,その増分は乾性沈着に由来していることが示唆された。 3.DINの年流出量は林外雨によるDIN沈着量を下回ったが,他流域の報告例と比較して高かった。これは渓流水中DINの大部分を占めるNO_<3^->-Nの濃度の高さに起因していた。 4.ONの年流出量は全窒素(T-N)の45%を占め,DINのT-N中に占める割合(55%)よりも低いことが明らかとなった。したがって,DIN:ON比は1.2と高く,対象流域の窒素状態を反映していると考えられた。 5.地下水および渓流水の水質水文観測から,DIN:ON比の妥当性を支持する結果が得られた。 6.本研究の結果は,対象としたヒノキ人工林流域の窒素状態が過剰であることを示唆していた。
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Research Products
(4 results)