2004 Fiscal Year Annual Research Report
思考における前頭葉-頭頂葉神経ネットワークの領域特異的役割の検討
Project/Area Number |
04J06829
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
田中 悟志 国立大学法人総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 運動前野 / 認知機能 / 脳機能画像 / 磁気刺激 |
Research Abstract |
霊長類を用いた電気生理学的研究や人の神経心理学的な研究から、Bordmann area 6(BA6)は高次運動機能に専制的に関わる領域であると従来考えられてきた。しかしながら、近年の脳機能画像法を用いた実験から、BA6が非運動性認知課題中にも広く活動することが明らかになってきた。本研究では空間解像度の優れた脳機能画像法である機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging : fMRI)と、磁気によって発生する渦電流によって一時的に脳機能を抑制する連続経頭蓋磁気刺激法(repetitive transcranial magnetic stimulation : rTMS)を用いることにより、ヒトBA6の非運動性認知機能に関する機能局在とその機能的有意性について検討した。14名の健常被験者がfMRI実験とrTMS実験の両方の実験に参加した。課題は心表象を逐次操作する心表象操作課題であった。心表象の違いにより言語表象操作課題と視空間表象操作課題の2種類が用意された。まずfMRI実験を行い、課題遂行中の脳活動を計測した。次に被験者ごとにfMRI、実験で明らかになったBA6の活動部位に対して、約8分間の低頻度rTMSを行い、心表象操作課題の成績への影響を検討した。fMRI実験では、視空間表象操作課題よりも言語表象操作課題において内側BA6がより活動を示した。一方、言語表象操作課題よりも視空間表象操作課題において両側の外側BA6がより活動を示した。rTMS実験では、内側BA6への連続磁気刺激は磁気刺激直後の言語表象操作課題の反応時間の参を遅延させた。一方、左半球もしくは右半球の外側BA6への連続磁気刺激は、磁気刺激直後の視空間表象操作課題の反応時間のみを遅延させた。30分後の課題成績にはいずれの脳部位への連続磁気刺激も影響を与えなかった。したがって、内側BA6は言語表象操作に関わり、両大脳半球の外側BA6は視空間表象操作に関わるという二重乖離が、同一の被験者を用いたfMRIとrTMS実験の2つの実験で示された。本実験結果は、BA6の非運動性認知機能に関する機能局在を強く示すものである。
|