2004 Fiscal Year Annual Research Report
シロイヌナズナ内在性トランスポゾンのエピジェネティックな制御
Project/Area Number |
04J06866
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
加藤 政臣 国立大学法人総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | エピジェネティクス / トランスポゾン / DNAメチル化 / ヘテロクロマチン / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
DNA配列の変化を伴わないエピジェネティックな遺伝子発現修飾の例が様々な生物で知られている。これはDNAやクロマチンの修飾によると考えられている。これらエピジェネティックな修飾は分裂酵母から脊椎動物まで普遍的に保存されているが、その役割には未知の部分も多い。私はシロイヌナズナのDNAメチル化に影響する変異体を用いて、エピジェネティックな遺伝子発現調節とトランスポゾン制御との関係について調べている。 シロイヌナズナのddm1変異はゲノムDNAの低メチル化を引き起こす。内在トランスポゾンCACTA1は野生型条件下では転移不活性な状態で維持されているが、ddm1変異条件下では高頻度に転移を起こす。またddm1変異により活性化したCACTA1は野生型条件下に戻した後も転移し続けた(Genetics. 168,961-969)。同時にddm1変異により引き起こされたDNA低メチル化の状態は元には戻らず、低メチル化のままであった。トランスポゾンのサイレンシングは、世代ごとの新たなメチル化による再不活性化ではなく、世代を越えた不活性状態の維持に依存しているようだ。 シロイヌナズナの自然集団におけるトランスポゾンの挙動を知るため、幾つかの野生系統でのCACTA1類似トランスポゾンの分布を調べた.その分布は系統により多様であるにもかかわらず、大部分がセントロメアヘテロクロマチン付近に集中していた(MGG. 270,524-532)。他のファミリーのトランスポゾンも一般にヘテロクロマチンに蓄積する傾向がある。しかしその原因はわかっていない。上記の野生型条件下でCACTA1の転移を誘導する系を用い、その転移先を調べた。その結果から、少なくともこのファミリーのトランスポゾンについては、ヘテロクロマチン特異的な挿入がトランスポゾンの分布を決定する直接的要因ではないと示唆された(Genetics. 168,961-969)。現在トランスポゾンの分布に影響する他の要因について検討している。トランスポゾンの挙動を知ることはセントロメア機能やヘテロクロマチンの進化を考える上で興味深い。
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Research Products
(4 results)