2004 Fiscal Year Annual Research Report
2光子励起法を用いたスパイン形態変化と蛋白質合成との相関性の研究
Project/Area Number |
04J06884
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
本蔵 直樹 国立大学法人総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経科学 / シナプス可塑性 / 分子生物学 / 生理学 / スパイン |
Research Abstract |
研究の概要 脳の学習・記憶の素過程はシナプスの伝達効率の変化(シナプス可塑性)にあると考えられている。代表的なシナプス可塑性である、シナプス前後部における伝達効率が増加する現象である長期増強(LTP)は、記憶形成に関与するとされる。しかしシナプス可塑性の研究の多くは、誘発方法として電極または薬理刺激を用いたもので、計測方法はシナプス後細胞の電位・電流記録である。この場合、多数のシナプス部位の総和反応を計測しており、単一スパインのシナプスでの現象は不明であり、スパインの形態と機能の関係は不明である。そこで我々は、2光子励起可能なケイジドグルタミン酸を開発し、シナプス前終末と同様な空間解像でグルタミン酸を光学的に放出する技術を開発した。この方法により単一スパインのシナプスを刺激することで神経可塑性を誘発し、同時に形態を観察することが可能となった。また出来る限り生体内に近い状態で調べるためサンプルは海馬スライス培養標本を用い、細胞に発現させたGFPによって単一スパインを観察した。その結果、刺激されたスパイン選択的にその頭部体積が増加し、5分以内に元の約3倍の体積に達し、3割程度のスパインは、20分後には1.5倍まで戻った後、大きさが100分以上維持された。この時間経過は、電気刺激で観察される長期増強の形成パターンとほぼ一致する。またこの時、一過性の体積増大は多くのスパインで観察されるが、持続性の体積増大は小さいスパインで約55%観察され、大きいスパインでは5%にしか見られなくなった。この形態可塑性は、NMDA受容体阻害剤、アクチン重合阻害剤、カルモジュリン阻害剤によってほぼ完全に阻害された。これらはいずれも、LTPを抑制することが知られている。このことは、シナプス可塑性が単一スパインレベルで調節され、それはスパイン形態に反映している事が示唆された。
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