2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J06934
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
有村 奈利子 愛知県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 神経 / 軸索 / CRMP-2 / kinesin / GSK3 / リン酸化 |
Research Abstract |
脳神経系は極めて精巧な神経回路網を有する。このような神経回路網の形成には、軸索と樹状突起という2つの異なる神経突起が複雑にシナプスを形成することで形成、機能している。しかしながらこれらの突起の形成メカニズムについては不明な点が多い。以前私はcollapsin response mediator protein-2(CRMP-2)が軸索の伸長や退縮に関与することを明らかにしてきた。さらに近年、CRMP-2が軸索/樹状突起の運命決定を担い、極性形成や軸索伸長に重要な役割を果たすことが提唱されている。今年度発表した論文の中で私と共同研究者はラミニンなどの接着分子の下流でPI3-kinaseが神経突起先端で活性化され、産生されたPIP3によって未成熟な神経突起が軸索へ運命決定されることを示した。そこで、CRMP-2とPI3-kinase/PIP3系の関係を明らかにすることを目的に解析を進めたところ、1)GSK 3betaがCRMP-2をリン酸化して不活性化すること、PIP3が産生されるとAktを介してGSK 3betaがリン酸化されて不活性化されることを見出した。また、GSK 3betaの阻害剤等でCRMP-2のリン酸化レベルを下げると通常一本の神経軸索が複数本形成される事が明らかになった。これらのリン酸化は神経栄養因子として知られるBDNF刺激の下流で抑制されることが明らかになった。以上の結果より、神経細胞の軸索形成、及び極性形成にGSK 3betaによるCRMP-2のリン酸化が重要な役割を果たしていると考えられる。また、2)CRMP-2は微小管モーターであるKinesin-1の軽鎖であるkinesin light chain(KLC)と直接結合し、軸索の先端に輸送されることを見出した。KLCの機能をsiRNAによって抑制すると、CRMP-2の軸索先端での濃縮が減少し、軸索の形成不全、及び神経極性に異常が見られることが明らかとなった。Kinesin-1はCRMP-2等の神経軸索形成分子の輸送を介して軸索・樹状突起の分化、形成に重要な役割を果たすと考えられる。 本年度の成果は神経回路網形成機構を理解する上で極めて重要である。従って本年度の研究計画はほぼ達成することができたと考えている。
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