2004 Fiscal Year Annual Research Report
携帯電話の採用及び利用を規定する心理的・社会的要因の質的調査による探求
Project/Area Number |
04J06983
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Research Institution | Sophia University |
Research Fellow |
小寺 敦之 上智大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 携帯電話 / メディア利用 / 非所有 / 非利用 / 大学生 / IPA / 質的調査 |
Research Abstract |
本年度は、携帯電話利用の背景にある心理的・社会的要因についての足がかりを得るため、以下の調査を行った。 【調査A】携帯電話利用の動機及び利用経験を把握するにあたり、大学生9名の協力を得てそれぞれ2週間の携帯電話非所有状況を実験的に作り出した。これは「獲得された満足」からその利用動機を類推するというこれまでの「利用と満足研究」の問題点を克服するだけでなく、携帯電話利用について被験者から意識的な報告を求めるためでもある。この実験により、携帯電話が有する多様な諸機能を見出せたとともに、特に携帯電話利用を取り巻く人間関係について深い情報を得ることができた。今後は、この調査で得られたデータを基に心理的・社会的要因の追求を進めていく。(現在データ分析中) 【調査B】携帯電話所有率が高い若者世代において、意図的に所有しない者についてインタビュー調査を行った。その結果、コストやサービスといった側面ではなく、「自身の情報環境への満足感」「所有のデメリット」「利用者や社会への批判的視点」などの多様な要因が非所有者による携帯電話所有を阻害していることが見出された。(継続調査中・発表準備中) 上記の調査は、いずれも質的アプローチによってデータ分析が行われた。質的調査は現在のメディア利用研究においてはほとんど行われていないが、利用者の経験や世界観を理解するうえでは有効なアプローチである。本調査では、主にソーシャルワーク研究で用いられているIPA(Interpretative Phenomenological Analysis)という分析法を用いた。これは描写的質的方法ではなく体系的なアプローチであり、メディア研究における質的アプローチの有効性と可能性を示すこともできた。
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