2004 Fiscal Year Annual Research Report
北部タイにおけるHIV/AIDS感染者グループに見るアイデンティティ形成過程
Project/Area Number |
04J06995
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
日野 智豪 上智大学, 外国語学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タイ / 医療人類学 / 地域研究 / HIV / AIDS / 伝統医療 / 近代医療 / 医療政策 / NGO |
Research Abstract |
1.研究の目的 本研究の目的は、タイ王国チェンマイ県周辺(サンカムペーン郡、メーオン支郡を基点とする)を調査地としたうえで、北部タイの地域社会内部におけるHIV/AIDS感染者グループの実践をとおして、感染者の位置づけを医療人類学的、およびジェンダー論的分析より明らかにすることである。本研究は、(1)「個々」のHIV/AIDS感染者のアイデンティティ形成過程、(2)「北部タイ」という地域性、(3)HIV/AIDSという「病気」の特殊性、という3つの側面に依拠して進められる。 2.研究実績 本年においては、(1)「個々」のHIV/AIDS感染者のアイデンティティ形成過程、を明らかにすることを目指し、タイ王国チェンマイ県、ランパーン県、メーホンソーン県における現地調査を4ヶ月間実施した。具体的には、HIV/AIDS感染者が感染の事実を医師から告知されたとき、それをどのように受け入れ、病気にどのように立ち向かうかに着目し、近代医療と伝統医療をどのように使い分けるかという視点から、HIV/AIDS感染者に対する聞き取り調査をおこなった。この聞き取りによって得られたデータを2004年1月に上智大学に提出した修士論文「北部タイにおけるARV療法普及の影響:HIV/AIDS感染者の生活と治療から」で得られた調査データと照合したうえで、修士論文を加筆、修正した論文「薬草とARVのはざまで-北部タイにおけるHIV/AIDS感染者の薬品受容をめぐる医療人類学的考察」として『上智アジア学』に発表した(2005年2月15日現在印刷中)。本論文では、農村に暮らすHIV/AIDS感染者がタイ政府の医療政策や国際NGOのARV普及プロジェクトの実施にといった社会変容に対し、限られた情報を駆使して一日でも長く生き長らえるための「したたかな」意思決定をおこなっている様子を明らかにした。
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Research Products
(1 results)