2004 Fiscal Year Annual Research Report
植民地朝鮮における対日協力・動員政策と朝鮮人知識人
Project/Area Number |
04J07151
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
趙 慶喜 東京外国語大学, 外国語学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 植民地主義 / 脱植民地化 / 3.1独立運動 / アジア連帯 / 文化政治 / 自治運動 / 東アジア / 植民地近代 |
Research Abstract |
本研究は,1919年の朝鮮独立運動後の帝国の再編過程と,そのなかであらわれたさまざまな「脱植民地化」の試みの失敗の歴史を思想的にたどることを目指している。一年目の今年度は,その一環として朝鮮の20年代に見られたアジア主義やアジア連帯論に着目し,主に新聞の社説や知識人の発言を通して当時の言説状況をまとめた(その一部については「植民地朝鮮におけるアジア連帯論の行方」として掲載予定)。その内容はおおよそ次の通りである。 3.1運動を経た20年代の朝鮮では,アジア認識をめぐる新たな段階をむかえていた。脱植民地化の挫折を経験するなかで、同じように民族自決主義の「例外地」に置かれていた他のアジア民族に対して連帯意識が芽生えていた一方で、西洋に対峙するアジア連帯論はもはや効力を失い、東アジア内部を利害関係が衝突する葛藤の場としてあらためて認識するようになっていた。当時,米国の排日主義を背景に、日本が人種あるいは文化にもとづいた西洋/東洋の二項図式を当然のように設定していたのに対し、朝鮮ではすでに権力的利害関係にもとづいた帝国主義/被圧迫・弱小民族という図式から日本に対して批判を投げかけていたことを明らかにした。 またそのほか,日中戦争期にあらわれた朝鮮人知識人による「内鮮一体」論を掘り起こし,それらを整理検討する作業をおこなった(その成果については,研究会による共同作業「資料と証言II 日中戦争期・朝鮮人知識人の内鮮一体論」として掲載予定)。30年代以後,東アジア内部の葛藤がさらなる深化を見せ、それらを覆い隠すなかでふたたび登場するこうした言説は,20年代のアジア連帯論や自治論,文化運動論などの朝鮮の「脱植民地化」の失敗の歴史との連続性のなかで問われるべき問題でもある。またそれらは40年代の大東亜共栄圏に至るまでの何らかの文脈を準備するものなのか。こうした問いへの取り組みは今後の大きな課題である。
|
Research Products
(4 results)