2004 Fiscal Year Annual Research Report
仏教的世界観による王権と聖地復元の研究〜中世日本の宗教景観〜
Project/Area Number |
04J07257
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松本 郁代 立命館大学, ARC, 特別研究員(PD)
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Keywords | 王権 / 偽書・偽文書 / 中世神話 / 真言密教 / 即位灌頂 / 聖地 / 有職故実 / 神泉苑 |
Research Abstract |
本テーマに関する今年度の研究実績の具体的内容については、(1)中世王権に関する研究、(2)真言密教法流に関する研究、(3)聖地、(4)聖教と偽書の研究に大別できる。 まず、(1)に関する論文「中世の「天皇」と即位灌頂-真言方即位法をめぐって-」では、天皇が即位儀礼の際に行う密教儀礼である即位灌頂について、現在、東寺観智院金剛蔵聖教に所蔵されている即位法関係資料を使い分析を行った。また、論文「中世の「礼服御覧」と袞冕十二章-天皇即位をめぐる儀礼と王権-」では、天皇が即位儀礼で着用する袞冕十二章の文様や、これを検分する行事である礼服御覧について分析した。これらは、中世王権のいわば「聖地」における行事として、天皇の即位儀礼を捉えたものであり、即位の場の変遷や、仏教が天皇をどのようにして捉えているかについて論じたものである。(2)に関しては、「鳥羽勝光明院宝蔵の『御遺告』と宝珠-院政期小野流の真言密教-」を論文としてまとめた。本論文では、真言密教法流である小野流の中でも、醍醐寺流と勧修寺流が伝持していた「宝珠」に関する秘説の違いを、法流の性質の違いとして捉えたものである。また、王権が固執した「宝物」としての宝珠の存在を、密教がいかにして利用したか、「御倉」や「宝蔵」に安置された宝珠に焦点をあて、王権との関係を論じた。(3)に関する論文「鎌倉時代の神泉苑請雨経法指図-財団法人藤井永観文庫所蔵『神泉苑請雨経法道場図』の紹介-」では、藤井永観文庫(立命館大学ARC所蔵)『神泉苑請雨経法道場図』を紹介しながら、京都における聖地である「神泉苑」を、視覚的資料として提示した。この研究に関しては、「Rain-making rituals and Esoteric Buddhism in Medieval Japan」と題した研究報告をロンドン大学SOASでも行った。(4)「中世の偽書・偽文書-空海に仮託された史料-」では、本研究が素材とする資料・史料の性質に対する視角や方法について論じたものである。以上が主な概要である。
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