2004 Fiscal Year Annual Research Report
フランスを中心としたイマージュの人間学的・現象学的研究
Project/Area Number |
04J07263
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 周史 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | メルロ=ポンティ / 身体 / 図式 / イマージュ / 知覚 / 絵画 |
Research Abstract |
フランス、パリのエコール・ノルマル・シュペリウールにて受け入れ許可を得、本研究計画遂行のため指導を受けながら活動を実行した。受け入れ教官であるクロード・アンベール女史が週一回主催する「芸術、創造、認知」をテーマにしたセミナーを中心として、必要に応じた様々な講義を受講した。同教官とはその他に特別に課外セミナーの時間をもうけ、前半期にはメルロ=ポンティの読書会、後半期には本研究に関する個人指導を受けた。また、現地の利点を生かして、パリの研究機関、美術館等での資料収集や実地活動を行うとともに、ドイツ(ベルリン、ミュンヘン)およびイタリア(フィレンツェ、ローマ)においてもフィールド・ワークを行う機会を得た。 当初の研究計画である知覚、イマージュ、言語の相互的な関わりを分析するため、メルロ=ポンティの主要著作および講義ノートを用いて概念整理を行い、ソシュールの言語学講義や多くの心理学や芸術学関連の著作を研究した。中でも心理学から得た主要な成果としては、図式概念の歴史的理解があり、とくに病理学的な身体図式の障害事例や児童心理学的見地から見た身体図式の発達段階を研究するなかで、イマージュの知覚認知構造との相互媒介を具体的に捉えることができた。また、カッシーラーの「象徴形式」概念を絵画における空間構造の分析に適用したパノフスキーから研究上の大きな着想を得ることができた。メルロ=ポンティ研究においては、特に後期思想において、残された著作の解釈上の諸問題を講義ノートによって正確に把握し、理解することに努めた。他方で、ジルベール・デュランの読解も進め、今後の研究に繋げる準備を行っている。
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