2005 Fiscal Year Annual Research Report
癌抑制遺伝子p53のアポトーシス誘導能を制御するメカニズムの研究
Project/Area Number |
04J07429
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
鹿島 勲 横浜市立大学, 医学研究科, 特別研究員
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Keywords | mRNA品質管理 / RNA surveillance / Nonsense-mediated mRNA decay / SMG / UPF / eRF / 翻訳終結因子 / EJC |
Research Abstract |
ヒトを含む高等真核細胞が恒常性を保つためにどのようにして複雑な遺伝情報を正碓に発現・伝達しているかを解明することは、生命の本質を理解する上で、またそれらの異常により生ずるがんや遺伝性疾患などの診断・治療を進渉させる上で重要である。真核細胞には、本来の終止コドンよりも5'上流の位置に終止コドン(ナンセンスコドン)を有するmRNA(ナンセンスmRNA)を認識し、急速に分解するmRNA監視システムであるNMD(nonsense-mediated mRNA decay;ナンセンスコドン依存的mRNA分解)が存在する。NMDの主な役割は、ナンセンスmRNAを認識し急速に分解することで、ナンセンスmRNAがコードする異常タンパク質断片の蓄積を防ぐことであると考えられている。実際、遺伝性疾患の詳細な家系調査から、NMDはナンセンス変異に由来する遺伝病の疾患表現型を緩和し、本来優性となるべき形質を劣性にすることが様々な遺伝子について確認されている。また、NMDは遺伝子変異やmRNAスプライシング異常から生じるC末端の欠損したタンパク質をコードする異常なmRNAの排除のみならず、正常な遺伝子由来のmRNAがNMDにより分解される場合があることが分かってきた。酵母、ハエ、ヒトにおいて、テロメア維持、転写制御、細胞内輸送、エネルギー代謝に関与する遺伝子群などがNMDにより分解される構造をとる遺伝子(潜在的NMD標的遺伝子)であることが示され、これらの遺伝子群の関わる現象に遺伝子発現調節を介しNMDが何らかの制御をおこなっていることが予測されている。 我々はこれまでに、超巨大タンパク質リン酸化酵素SMG-1の機能がナンセンスmRNA認識・分解の"キープレイヤー"であるRNAヘリカーゼUpf1をリン酸化すること、そのリン酸化がナンセンスmRNAの認識・分解に必須な"ナンセンスmRNA認識・分解の引き金"であることを明らかにしてきた。しかしながら、どのような分子機構でナンセンスmRNAが認識されるのか、また、Upf1リン酸化とEJCや翻訳終結との関わりは全く不明であった。本研究では、NMDの律速段階となっている生化学的な機構-SMG-1によるUpf1のリン酸化-に着目し、その機構を解析することを通じて正常なmRNAとナンセンスmRNAとを識別する分子機構を解明し発表した(発表論文1番目)。また、上記の最新の研究内容をもとにmRNA品質管理のひとつNMDの分子機構を全体に渡って紹介した総説を発表した(発表論文2・3番目)。
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Research Products
(3 results)