2004 Fiscal Year Annual Research Report
鳥類における他者の行為を通じた認知とその脳内機構に関する研究
Project/Area Number |
04J07493
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊澤 栄一 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | bird / corvid / crow / social hierarchy / laterality / probabilistic inference |
Research Abstract |
本年度は行動実験を中心に行い、下記3点の知見を得た。 1.飼育下におけるハシブトガラスの群れには線形の社会性順位が存在する。 飼育下のハシブトガラス14個体について、餌を奪い合う状況下における個体間順位の有無を調べた。一対対戦法を全個体総当り戦で行い、各個体の威嚇・服従行動を解析した。結果、一部に逆転関係が見られるが、14個体間に有意な線形性の順位関係が見出された。これは、ハシブトガラスが互いに個体弁別を行うことを示唆する。また、順位は体重や嘴長などの物理的特長とは無相関であり、個体弁別が複雑な認知過程を含む可能性が見出された。さらに、雄が雌よりも高順位を占めること、繁殖期を除く期間は順位が安定していることが分かった。本知見は次年度、「観察学習における社会的順位の影響」の検証に重要な知見である。 2.ハシブトガラスは利き足を持つ。 上述1の実験中、餌を食べる際に典型的に見られる、餌を足で押さえつける行動を解析した。13個体が同行動を示し、うち12個体が常に同じ足を用いた。続いて、嘴に付いた輪ゴムを足で外す行動を解析したところ、全個体が、餌押さえ行動と同側の足を用いた。これらは、ハシブトガラスが利き足を持つことを示唆する。 3.ハシブトガラスは確率推論を用いることができる。 ハシブトガラスは、「餌が入っていない透明な箱」と「餌が入っているか分からない黒い箱」を提示された場合、それが初めての状況であっても、まず黒い箱を探索した。ハシブトガラスが餌を探す際に、「無い」という情報を積極的に用いることで、不確定な餌の在り処を推測している(確率推論)ことを示唆する。彼らが大型霊長類に匹敵する認知機能を持つことを示す例である
|
Research Products
(1 results)