2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J07633
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
多田 敬典 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 傍腫瘍性神経症候群 / ユビキチンリガーゼ / 精神神経疾患 |
Research Abstract |
鬱病、統合失調症などの精神神経疾患が発症するにはどのような分子が関わり、どのような生命現象がおこっているのであろうか?我々は全く新しいアプローチとして傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurologic disorder ; PND)に着目した。自己免疫疾患の一つと考えられているPNDは悪性腫瘍患者において腫瘍細胞の直接の浸潤や転移によらず腫瘍の遠隔作用による神経症状を呈する疾患である。PND患者では血清や髄液中に腫瘍と神経細胞の両方に結合する自己抗体の存在が認められている。我々は精神症状を呈したPND疑いの患者血清を用い、自己抗体の標的抗原候補として神経系特異的新規ユビキチンリガーゼKspot(Keio Stomach cancer Psychiatry Onconeural Target)の同定に成功した。 KspotはN末端側にF-boxドメインををもつF-boxタンパク質群の新メンバーであると考えられる。F-boxタンパク質はユビキチン・プロテアソームシステムで重要な働きをするユビキチンリガーゼの構成分子であることが報告されている。現在までの我々の解析からKspotは神経系特異的に発現する分子で、ユビキチン関連分子Skp1,Cul1と複合体を形成して未同定の基質分子をユビキチン化しプロテアソームによる分解に導いていることが分かった。さらにKspotはショウジョウバエと線虫に高い相同性を示すホモログが存在することから、進化上非常に重要な遺伝子であることが示唆される。 近年、多くの神経変性疾患の病態形成にユビキチン・プロテアソームシステムによるタンパク質分解不全が深く関与していることが示されてきた。このことよりKspotが標的分子として自己免疫にともなう精神障害発症機序に関与している可能性が考えられ、Kspotの機能解析によりその一端が明らかになることが期待される。
|