2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J07633
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
多田 敬典 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 傍腫瘍性神経症候群 / ユビキチン / シナプス / 精神神経疾患 |
Research Abstract |
現在、鬱病や統合失調症など精神神経疾患の病態の分子メカニズムの解明、効果的な治療法の開発を目的とした研究が世界中で行われているが、申請者らは精神障害の病態生理解明のため全く新しいアプローチによる研究を行ってきた。注目したのは悪性腫瘍に合併し精神神経症状を呈した傍腫瘍性神経症候群が疑われた患者である。申請者はこの患者の脳脊髄液と血清中に脳組織に反応する自己抗体の存在を発見し、その標的抗原として新規ユビキチンリガーゼKspot(Keio Stomach cancer Psychiatry Onconeural Target)を同定した。 現在までの解析からKspotは神経系特異的に発現する分子であり、未同定ではあるが基質分子をユビキチン化しプロテアソームによる分解に導いていることが明らかとなった。Kspotの基質分子を検索するためKspot結合タンパク質の精製を試みた。Myc結合タンパク質PAM(Protein Associated with Myc)をはじめ複数の分子が同定された。PAM自身ユビキチンリガーゼと考えられており、Kspotと酷似した中枢神経系の発現を示している。最近、線虫においてKspotホモログ遺伝子が同定され、線虫PAMと結合し、さらに同じ経路を介して神経細胞のシナプス形成の制御をしているという報告がなされた。実際Kspotにも線虫同様、シナプス機能を抑制することが申請者の研究により判明した。近年、多くの神経変性疾患の病態形成にユビキチン・プロテアソームシステムにおけるタンパク質分解不全が関与していることが報告されており、精神障害の病態生理にKspotのシナプス制御機能が関与している可能性が考えられる。申請者はシナプスにおけるKspotの生理的機能を解明することにより,精神障害発症の分子機序の一端を明らかにすることを目的としている。
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