2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヤップ社会の土地政策と近代的所有概念のグローバル化に関する人類学的研究
Project/Area Number |
04J07698
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
則竹 賢 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 人類学 / ミクロネシア / ヤップ / 所有 / 土地 / 法 / 紛争 |
Research Abstract |
1 ミクロネシア連邦ヤップ州で約2週間の現地調査を実施した。裁判官や弁護士をはじめとする州の法曹関係者へのインタビューを行い、従来の調査からは明らかにすることができなかった、法の専門家から見たヤップ州の法的状況についての知見を得た。同時に、これまで調査してきた土地および海域紛争事例についての追跡調査を行った。 2 昨年度より実施してきた法人類学勉強会の成果として、報告書『千葉理論再考-人類学的視点-』を編纂・刊行するとともに、同書に論文「「現地人の視点」から見た「多元的法体制」」を掲載した。この論文では、ヤップで発生した海域紛争の事例を分析し、紛争当事者自身の「多元的法体制」認識を明らかにした。そして、従来の多元的法体制論が人々の日常的な法認識を看過してきた点を指摘した。また報告書の「あとがき」では、本勉強会全体の成果として、多元的法体制論の視点を規範の多元性から生のリアリティの多元性へと転換させたことを挙げた。なお以上の成果の概要については、日本法社会学会および日本文化人類学会で口頭発表を行った。 3 その後、多元的法体制論から法のポストコロニアル研究へと至る理論的展開を検討した。その成果は、日本文化人類学会関西地区例会で行った口頭発表、並びに『法社会学』誌に発表予定の論文「多元的法体制はいかに認識されるか?」としてまとめられた。これらの発表および論文では、法のポストコロニアル研究への理論的展開が、かねてから繰り返し批判されてきた国家法中心主義に陥っており、人々の日常的実践に対する国家法のイデオロギー支配という理論図式を本質化してしまっている点を批判した。そして具体的な紛争事例の分析を行い、法のイデオロギーに必ずしも囚われない、人々の生のリアリティに定位する実証研究の実例を示し、その重要性を説いた。
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Research Products
(3 results)