2004 Fiscal Year Annual Research Report
超流動ヘリウム中での不安定核原子のレーザー光ポンピングと核構造研究への応用
Project/Area Number |
04J07969
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Research Institution | Osaka University |
Research Fellow |
古川 武 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 原子核構造 / 核モーメント / 短寿命核 / スピン偏極 / 光ポンピング法 / 超流動ヘリウム / レーザー分光 |
Research Abstract |
本研究は、超流動ヘリウム中という特異な環境を利用することで、これまでスピン偏極の生成が困難であった元素についてその偏極生成を可能にすること、およびこれを応用して原子核のもつ電磁気的性質(核モーメント)を系統的に測定することが目的である。特に、安定領域から遠く離れた短寿命な原子核の性質・構造はこれまでの理論的予想と大きくかけ離れていることが判り、その構造・性質の研究が盛んに行なわれている。しかし、短寿命な原子核の研究は実験的に難しく、特に核モーメントの測定は原子核自身の生成量、生成した原子核のスピン偏極生成、得られたスピン偏極の保持、など様々な問題のため、測定が困難な核種が多数存在する。我々の研究・開発はこのような短寿命不安定核の系統的な核モーメント測定が可能な強力な方法となることが期待されている。 本研究で最も重要な点は、超流動ヘリウム中での光ポンピング偏極生成法の確立である。まず初めに、これまで偏極生成が確認されているCs原子について、超流動ヘリウム中で生成されたスピン偏極が緩和するのにかかる時間を測定し、およそ2.4秒という非常に長い偏極緩和時間を得られた。これは、超流動ヘリウム中がスピン偏極を生成・保持する環境として優れていることを裏付けるデータの一つといえる。この結果は学術論文としてまとめており、近く学術雑誌へ投稿予定である。また2004年日本物理学会、素粒子・原子核分野秋の分科会(会場:高知大学)にて口頭発表を行なった。さらに我々はこれまでスピン偏極の生成例がないMg原子の準安定状態を用いた偏極生成を試みた。これまでのところ、約1%以上の偏極が実際に生成されているような兆候が確認され、今後より詳しく測定を行なう予定である。これまでの経緯は2004年度日本物理学会年次会(会場:九州大学)にて発表を行なっており、次回2005年度日本物理学会年次会(会場:東京理科大学)でも報告予定である。
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Research Products
(2 results)