2004 Fiscal Year Annual Research Report
高反応性デヒドロベンゾアヌレンの生成と巨大パイ電子系への変換
Project/Area Number |
04J08132
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Research Institution | Osaka University |
Research Fellow |
久木 一朗 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | デヒドロベンゾアヌレン / 高歪みデヒドロアヌレン / 光環開裂反応 / マトリックス単離 / 芳香族性 / 共役パイ電子系 / 密度汎関数法 / FTIRスペクトル |
Research Abstract |
近年、デヒドロベンゾアヌレン(DBA)については、光電子材料への応用の観点から活発な研究が行われている。中でも、高度に歪んだDBAはその歪みに由来する高反応性を示すことが予想され、その高反応性を利用した炭素材料への変換の可能性がある。そこで本研究では、高度に歪んだトリインユニットをもつジベンゾテトラキスデヒドロ[12]および、ジベンゾペンタキスデヒドロ[14]アヌレン([12]DBAおよび[14]DBA)に注目し、その生成とその分光学的な同定を目的として以下の実験を行った。[12]DBAおよび[14]DBAは、戸部研究グループで開発されたプロペラトリエンユニットで三重結合をマスクした前駆体の光化学的な[2+2]環開裂反応を用い、穏和な条件下でインダンを脱離させることにより生成させた。[12]DBAおよび[14]DBAは、(a)気相中でのレーザーデソープションマススペクトル、(b)溶液中での^1Hおよび^<13>C NMRスペクトル、(c)溶液中でのDiels-Alder付加体としての捕捉、(d)77Kでの2-メチルテトラヒドロフラン(MTHF)マトリックス中におけるUV-visスペクトル、(e)20KでのArマトリックス中におけるFT-IRスペクトルにより行った。 その結果、[12]DBAについてはその不安定性のためそのものを溶液中で観測することはできなかったが、Diels-Alder付加体として捕捉した。またMTHFマトリックス中におけるUVスペクトルによって、[12]DBAに帰属される化学種の吸収帯を観測した。さらに、Arマトリックス中でのFTIRスペクトルにおいて、[12]DBAに帰属される化学種の新しい吸収帯が認められ、それらは密度汎関数法により得られた理論的なIR吸収帯とよく一致したことから、[12]DBAが生成している明白な証拠を得た。一方、[14]DBAについては、溶液中において^1Hおよび^<13>C NMRスペクトルによってこれを同定することに成功した。[14]DBAは溶液中でもNMRスペクトルが測定できる程度の速度論的安定性を有することが明らかとなった。 さちに、[14]DBAとその前駆体とで、実験的および理論的^1H NMR化学シフトを比較することにより、[14]DBAのアヌレン環のdiatropicityが前駆体に比べて若干減少することが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)