2004 Fiscal Year Annual Research Report
DNA内高効率・長寿命電荷分離状態の生成とDNA分子デバイスへの応用
Project/Area Number |
04J08150
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高田 忠雄 大阪大学, 大学院・産業科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | DNA / 時間分解過渡吸収測定 / ホール移動 / 最配向エネルギー / ミスマッチ / 電子移動 / レーザー / 遺伝子診断 |
Research Abstract |
DNA中の長距離ホール移動速度、配列の影響を明らかにすることを目的として、高速時間分解過渡吸収測定によるホール移動過程の直接観測を試みた。具体的には、光電子移動反応によってDNA内にホールを注入するために、ナフタルイミドをDNAの末端に、またDNA内を移動するホールをプローブするために、別の末端にフェノチアジンを修飾したDNAを合成し、レーザー照射によって生じるナフタルイミドラジカルアニオン、フェノチアジンラジカルカチオンの吸収の時間変化を実時間で観測することで、種々の配列および距離におけるホール移動速度の決定を行った。フェノチアジンの吸収の時間変化から、100オングストロームの距離をホールが移動するのに要する時間は、GA繰り返し配列では数マイクロ秒、GT繰り返し配列では数百秒であることが示された。DNA内長距離ホール移動は配列に依存するものの、マイクロ秒からミリ秒までの時間スケールで進行することが分かった。さらに、DNA鎖内部にGTおよびACのミスマッチ塩基対を導入したところ、数十倍の速度の減少が観測され、DNA内のπスタックおよび水素結合の乱れは、ホールの移動を妨げることが示された。この結果は、DNA内のホール移動速度の観測によって、DNA内のミスマッチの有無を判別できることを示しており、SNP検出などの遺伝子診断への応用へと展開できるものと考えられる。 DNA内のホール移動過程を支配する因子をより詳細に検討するために、ホール移動速度の温度効果に関する実験を行った。温度の上昇につれその速度は増加し、マーカスの電子移動理論に基づき、ホール移動に伴う最配向エネルギーを求めたところ、二つのG間の距離が増加するにつれてそのエネルギーは増加することが明らかとなった。配向エネルギーの変化は、溶媒項に起因することから、DNAを取り囲む水の動きがホール移動の速度に大きく関わることが示された。
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Research Products
(1 results)