2004 Fiscal Year Annual Research Report
サイクリン依存性キナーゼインヒビターによる中枢神経軸索伸展阻害物質の抑制
Project/Area Number |
04J08189
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Research Institution | Osaka University |
Research Fellow |
田中 啓之 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | サイクリン依存性キナーゼインヒビター / 中枢神経再生 / 軸索伸展阻害物質 |
Research Abstract |
まず軸索再生に対して負の働きを持つRho-kinaseのインヒビターであるサイクリン依存性キナーゼインヒビターp21を生体内に導入することにより、軸索再生および脊髄損傷後の機能回復が認められるかどうかを調べた。生体内にp21を投与するための方法としてHIVウイルス由来のアミノ酸配列を持つTAT蛋白質を作成した(TAT結合p21蛋白質、コントロール蛋白質)。この蛋白質はin vitro, in vivoいずれにおいても細胞内に容易に取り込まれ、さらにラットの初代培養海馬神経細胞の培養液にTAT結合p21蛋白質を加えることにより、有意な軸索伸展が認められた。そこでこの蛋白質が中枢神経損傷後の軸索再生および機能回復を促進させるかどうかを調べるために、ラット脊髄損傷モデルを作製した。第10胸椎レベルにて脊髄背側半切断を行い、同時に体内埋め込み型持続浸透圧ポンプを留置することにより、TAT結合p21蛋白質の持続投与を行った。ラット脊髄損傷後の機能評価としてBBB scoreを用いたところ、TAT結合p21蛋白質投与群において4週後より有意なscoreの上昇が認められた。またトレーサーを用いて切断された皮質脊髄路のマーキングを行うことにより、損傷軸索の再生の有無について観察を行ったところ、TAT結合p21蛋白質投与群では損傷部やや頭側から5mm尾側にかけて有意な軸索再生の増加が認められた。電気生理学的検査として両後肢の筋電図測定を行ったところ、屈筋-伸筋間、および両後肢間の協調運動に関して、TAT結合p21蛋白質投与群では有意な増加が認められた。ラット脊髄損傷後には通常脊髄内に空洞が形成されるため、最後に空洞形成について調べたところ、TAT結合p21蛋白質投与群では有意に空洞形成が抑えられていることがわかった。これらの結果よりp21投与により、脊髄損傷後の軸索再生および機能回復が促進されることがわかった。
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Research Products
(1 results)