2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J08290
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邉 英明 大阪大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 市町 / 市場 / 江戸時代 / 定期市 |
Research Abstract |
(1)江戸時代の関東在方市町における市場争論と市場絵図 10月までに埼玉県立文書館や小川町教育委員会から絵図写真の提供を受け、論の補強を行った。 (2)江戸時代の関東在方市町における市場網の再編と村明細帳の役割 本年度は17世紀後期以降の武蔵国における市場網再編の問題について、村明細帳に注目する立場から検討を進めてきた。現時点で以下のような知見が得られた。 江戸時代の関東の定期市は、家康の関東入国を契機に大規模に再編された。その後、17世紀の検地で市町の権利が確定されていく。だが、元禄期以降は商品生産の進展により、定期市の役割が大きく転換する。在地への日常物資供給機能が衰退し、特産品の集荷機能が増大する。その過程で、既存の定期市の淘汰・再編が進む。既存定期市の衰退の様子は『新編武蔵国風土記稿』から分析可能(先行研究で明らかに)。だが、市日の変動や新期市立という局面は不明な点が多かった。こうした、『新編武蔵国風土記稿』では分析できない局面について、村明細帳から分析できる可能性があると考えられる。村明細帳の可能性は、戦前から指摘されてきた。また、局地的には村明細帳を利用した研究もあったが、本格的な分析には至らなかった。先行研究で指摘されていた以外にも、新期市立の動きは存在した。そのなかには、野火止宿のように市立後に数年で衰退するものも含まれる。官撰地誌である『新編武蔵国風土記稿』に表れる以外にも、市が存在する実態が窺える場合がある。1つの市が衰退と再興を繰り返す場合がある。村明細帳からその時期がより特定できることがある。村明細帳に市場に関する事項が記載された背景の1つに、市場争論時に市立の証拠として機能したことが考えられる。特に、市立の既成事実を村明細帳に記録し、新期市立の実現につなげた例も確認できる。
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