2005 Fiscal Year Annual Research Report
分配的正義の理論的・実証的研究-不平等指標と不公平感をもとにして-
Project/Area Number |
04J08301
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長松 奈美江 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 階級・階層 / 機会の平等 / 分配的正義 / 仕事の自律性 |
Research Abstract |
1.階級・階層構造と分配的正義の理論的研究 階級・階層の存在は、いかなる規範によって正当化されてきたかを、文献を精読することによって考察した。階級・階層研究では、親と子の地位が無相関である状態を指す「機会の平等」規範がさまざまな論者によって表明、支持されていること、それが社会的目的からの正当化、個人的立場からの正当化という2つの立場から論じられていることがわかった。そして、「機会の平等」を正当化しうる立場は個人的立場からしかありえないこと、「機会の平等」規範が、それが意味するとされてきた平等主義、職業選択の自由という価値を適切にあらわしているかどうかを検討した。「機会の平等」規範は、親と子の地位の関連を、不公正なものとして糾弾し続けるものとして機能し、それは、親の地位から自由に達成した地位による報酬の不平等までをも正当化しない。階級・階層地位に結びつく報酬の不平等が公正な分配状態であるかどうかを評価するためには、「機会の平等」規範以上のものが必要であることがわかった。 2.仕事の自律性からみた雇用関係の変化 階級・階層地位に結びつく資源のひとつとして、仕事の自律性に注目し、その変化を分析した。被雇用者がどれほど仕事の自律性を持っているかによって、被雇用者がいかに管理されているかが、被雇用者間で仕事の自律性がいかに規定されているかによって、被雇用者間の雇用主への有利性の不平等がわかる。従来の階級・階層図式は、もっぱら被雇用者間の不平等に焦点を当てており、被雇用者が管理される存在であり、その力関係が変化しうるものであるとは考えられてこなかった。1979年「仕事と人間調査」と2001〜2年「情報化社会に関する全国調査」を用いて分析した結果、被雇用者の仕事の自律性が低下し、また、職業に結びつく解雇のリスクと専門性の違いによって仕事の自律性が新たに差異化されるようになったことがわかった。
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