2004 Fiscal Year Annual Research Report
電子移動触媒を利用した高効率高選択的不斉触媒反応の開発
Project/Area Number |
04J08398
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
湯浅 順平 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | キラル / 電子移動 / キラルルイス酸触媒 / スカンジウムイオン / ラジカルアニオン / 電子アクセプター / ESR |
Research Abstract |
スカンジウムトリフラート[Sc(OTf)_3]存在下p-ベンゾキノンとそのジドロキノンのアセトニトリル溶液にキラル源として[R-(R, R]-2,6-ビス(4,5-ジヒドロ-4-フェニル-2-オキサジリル)ピリジン((R)-pybox)を添加すると長波長領域に吸収極大を有する新しい吸収帯の増大が観測された。この溶液の円二色性変更スペクトルを測定したところこの吸収帯から強いCD吸収が観測されることがわかった。このCD吸収は(R)-pyboxを(S)-pyboxに変えると完全に反転した。さらにESRスペクトルの測定からこの溶液中に含まれる常磁性分子の微細構造を得ることができた。この微細構造はキノン2分子に由来する8つの水素の微細結合定数と二つのスカンジウム核に由来する超微細結合定数との値のコンピューターシミレーションで再現することができた。このことからこの溶液中に含まれる常磁性分子はp-ベンゾキノンとセミキノンラジカルアニオンとの間に二つのSc(OTf)_3が架橋したπ-ダイマーラジカルアニオン錯体であることがわかった。またこのESRスペクトルのシグナル強度の二回積分の値から溶液中に含まれる常磁性分子の濃度を算出した。その結果、溶液中に含まれる常磁性分子の濃度は可視吸収スペクトルの変化と完全に対応することがわかった。以上のことからp-ベンゾキノンとそのジドロキノンの不均化によって生成したラジカルアニオン種にSc-pybox(OTf)_3が架橋した新規のキラル源を有するπ-ダイマーラジカルアニオン錯体が生成していることがわかった。今後はこのキラルなπ-ダイマーラジカルアニオン錯体を用いた種々の不斉反応を行う予定である。
|