2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J08603
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
奥村 健治 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヒト唾液腺 / 膵臓内分泌細胞 / CD49f (α6 integrin) / CD90 (Thy-1) / スフェロイド培養 / Ngn-3 |
Research Abstract |
目的と仮説/肝臓や膵臓のような内胚葉に由来する臓器組織には、それらの組織に共通する組織幹細胞が存在すると考えられる。これらの幹細胞もしくは組織前駆細胞は、共通する性質を持ち、お互いの組織細胞への分化転換能を持っていると考えられる。唾液腺は、内胚葉及び外胚葉の両方に由来しており、肝臓もしくは膵臓のフェノタイプを有する細胞への分化能を有する組織幹細胞を持っている可能性がある。 方法/成体ヒトの唾液腺組織より抗CD49f抗体と抗CD90抗体を用いてFACS法により組織前駆細胞を分離した。CD49f+/CD90+二重陽性細胞はヒト-SGP(ヒト唾液腺由来前駆細胞)と呼称した。ヒト-SGP細胞は1型コラーゲン塗布平板上で良く増殖した。 結果/ヒト-SGP細胞は低密度状態で培養した場合、CD29、CD44、CD49f、CD104のような各種の接着分子を発現していた。またヒト-SGP細胞はCD90を強く発現していた。更に、細胞質のラミニンが陽性であった。コンフルエントの状態以上に培養を継続すると、一部に細胞塊の形成が起こる。これらの細胞塊の中にはインスリン及びグルカゴン陽性細胞が見られた。ヒト-SGP細胞を膵内分泌細胞様の細胞に誘導するには、スフェロイド培養が大変有効であることを見いだした。600個のヒト-SGP細胞をスフェロイド培養すると、6日で100-120μm径のスフェロイド体を形成した。これらのスフェロイド体では、細胞はインスリンもしくはグルカゴン陽性細胞に自律的に分化した。スフェロイド体が培地中のインスリンを取り込んでいる可能性を検証する為に、内因性に産生されたインスリン値を反映するC-ペプチドを測定した。スフェロイド体のC-ペプチド含量は少なく(3.5ng/mg of protein)、スフェロイド培養の期間は内分泌前駆細胞マーカーであるNgn-3がスフェロイド体に発現していた。ヒト-SGP細胞は膵内分泌細胞様細胞に分化したが、未熟な状態に止まっていると考えられた。 結論/唾液腺は膵臓の再生医療に有用な内胚葉系前駆細胞の供給源になる可能性がある。
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