2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J08682
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
藤井 真生 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中世チェコ / 王権 / 都市 |
Research Abstract |
一年目は予定通り、近年個別に、また考古学などからの研究の進展が著しいチェコの都市研究の成果を援用しながら、中世チェコにおいて都市が、王権と貴族の関係にいかなる変化をもたらしたのか、両者の権力構造が変化してゆく過程においてどのような役割を果たしたのか、を考察することに集中した。その成果は、「13世紀チェコ王権の政策における都市の役割」『史林』87-3号として公刊した。この中では、従来は通説的に述べられるに留まってきた「王権に協力する教会」が、実はどのような内実を持つものであったのか、を多角的に分析した。便宜的に政治、経済、軍事の三分野に区別し、定説とされてきたこと、史料から読み取れる君主が都市に期待したこと、そして実際にはどの程度それを実行する能力を都市が備えていたのか、の順で分析を進めた。その結果、まずは経済面での貢献、すなわち収入源としての役割が望まれていたこと、そして貴族に対抗するための軍事拠点としての役割は当初はさほど期待できなかったこと、最後に政治的なパートナーとしては君主自身が求めていなかったことが明らかとなった。 その後は、前述の論考において対象とした13世紀以降の史料を収集しつつ、叙述史料を中心に読み込み、「チェコ」という枠組み認識の問題性について考察した。チェコとドイツという比較対象軸を設定している以上、中世における自己/他者認識の問題に踏み込まざるを得ないからである。その一端は、「中世チェコ人の形成」と題して、西洋史読書会大会(於・京都大学、2004年11月)において発表した。ここでは、西スラヴ系民族の中で、チェコとは別の国家を形成する可能性があったとも言われる「モラヴィア」の特殊性を取り上げた。中世初期の大モラヴィア滅亡後のモラヴィアでは、チェコと言語、君主家系、信仰、始祖伝説などを同じくし、独自の伝統を築くことができずにチェコへ統合されてゆく過程について論じた。
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Research Products
(1 results)