2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J08682
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
藤井 真生 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中世史 / チェコ / 首都 / 民族意識 / 俗語 / 人文主義 / 宗教改革 |
Research Abstract |
本年度に新たに取り組んだテーマは、王権と都市に関する諸問題のうち、中世の首都形成についてである。これに関連して、7月に国際日本文化研究センターで行われた「王権と都市に関する比較史的研究」共同研究会において、「中世チェコにおける「首都」の形成について」と題した中間発表を行った。この研究成果は、来年度末に論文集の形で公刊される予定となっている。 秋には「中世チェコの政治的統合--君主、貴族、共同体--」と題した博士論文を京都大学に提出し、2007年1月に学位が授与された。この論文は研究課題である中世チェコにおける権力構造の変化という問題を中心的に取り扱ったものであるが、これまで科学研究費補助金により購入した史料を活用し、この3年間に得られた教会や都市に関する知見を盛り込むことができた。また、夏にチェコで入手した最新の研究書の内容も、わずかではあるが反映させることができた。 また昨年度から取り組んでいる中世の民族意識の研究については、予定していた『いわゆるダリミル韻文年代記』『ズブラスラフ年代記』『プルカヴァ年代記』以外にも、14世紀のいくつかの年代記を中心に比較検討を行っている。できるだけ早くに雑誌論文として公にしたいと考えている。 さらに周縁的なテーマとしては、人文主義と宗教改革(フス派運動)との関係について考察し、その成果を公表した(「人文主義と宗教改革--チェコにおける人文主義の展開とフス派運動の影響」)。この論文はチェコにおける人文主義の受容とその特色を宗教改革との関係性を軸に捉えたものであるが、その際に浮かび上がってきたのは、人文主義者と宗教改革者に共通するラテン語から俗語への邦訳に励む姿であった。これは中世後期のヨーロッパに普遍的な現象であり、先に触れた中世の民族意識とも重なってくる問題である。この考察によって、中世後期から近世にかけての展望を得ることができた。
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Research Products
(1 results)