2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J08697
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
松永 寛明 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 監獄 / 刑罰 / 犯罪 / メディア / 明治 / 統制 / 逸脱 / 社会学 |
Research Abstract |
本年度は、学説研究および現行刑法の制定過程の研究を行い、その成果を論文・学会報告として発表した。これらの研究は、監獄設立の社会的要因を解明するうえで不可欠な、刑事司法をめぐる観衆の社会的機能について考察するものである。併せて、関連する文書・文献の収集も行った。また、明治期における観衆の社会的機能をより鮮明にするために、比較研究として、1980年代以降の日本における少年非行に関する著書の書評を執筆した。論文および学会報告の概要は以下のとおりである。 1 エミール・デュルケムとミシェル・フーコーの刑罰理論の比較検討から、両者とも理論の中に、法執行者とも法違反者とも異なる、刑事司法をめぐる第三者を組み込んでいるのが判明した。刑事司法をめぐる第三者とは、デュルケムにとっては集合意識であり、フーコーにとっては身体刑の観客としての民衆、法の名宛人としての公衆、そして匿名の監視人である。両者の理論は、従来の犯罪社会学や逸脱論が依拠してきた「単項モデル」(法違反者または法執行者に着目)および「二項モデル」(法違反者と法執行者との関係に着目)に還元できない「三項モデル」(法執行者-法違反者-第三者の関係構造に着目)を提示している。 2 現行の明治40年刑法の制定過程を中心に、法定刑決定の意図および基準を明らかにした。すなわち、明治政府の法案起草者たちは、(1)19世紀末から20世紀初頭にかけての急速な社会変化のもたらす再犯増加の防止という目的のために、(2)1810年フランス刑法と新律綱領・改定律例にもとづく明治13年刑法を基準にして、(3)裁判官の裁量を拡大するという意図を込めて、明治40年刑法に幅の広い法定刑を規定したことが判明した。言い換えれば、現行刑法の起草者たちにとって法定刑とは、再犯-裁判官-成文法を結びつけるための社会装置である。
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Research Products
(3 results)