2005 Fiscal Year Annual Research Report
二〇世紀転換期アフリカ系アメリカ人の権利運動におけるジェンダー・階級・国民意識
Project/Area Number |
04J08801
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
兼子 歩 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アメリカ史 / 黒人 / ジェンダー / 男性性(マスキュリニティ) / 中産階級 / 愛国主義 |
Research Abstract |
報告者は、平成17年2月21より平成18年1月25日まで、アメリカ合衆国・メリーランド大学において在外研究に従事し、メリーランド大学図書館、連邦議会図書館、国立公文書館、およびバージニア州リッチモンド市のマギー・レナ・ウォーカー史跡での資料調査および収集した資料の分析を通じて、以下のような知見を得た。 20世紀初頭において、アメリカ合衆国の黒人中産階級女性は非常に活発な公的活動を行っていた。とりわけそれは1900年にブッカー・T・ワシントンが設立した全国黒人実業連盟に顕著にあらわれていた。この連盟は、黒人実業家たちが個々人の才覚と生産者的美徳(すなわち、個人の節制・勤勉・倹約・貯蓄による財産所得)による事業の立ち上げと成功を互いに称揚すると同時に、これを黒人男性の「男らしさ」の証拠として白人社会に顕示し、もって「アメリカ市民」として承認されることを目指す会であった。 当時の黒人社会にあっては、黒人女性が事業を興すことは「黒人の富を増やす」という観点から奨励され、上記連盟は女性会員を歓迎していた。 しかしこの連盟において、黒人女性実業家の会員たちは、単に実業家の美徳を称揚するのみならず、ビジネスを「男らしい」活動として理解しようとする男性会員に対し、年次大会その他の機会をとらえて反論を加え、女性もまた(あるいは、女性こそ)生産者的美徳を体現しうることを示そうと試みた。 すなわち連盟においては、黒人男性と黒人女性が「実業の発展を通じた黒人社会の引き上げ」を目指す点で協調しつつ、誰が「引き上げ」の真の担い手となるべきか、その資格の定義をめぐって争っていたのである。両者は、人種的共通性にもとづいて同一化するか、ジェンダーに立脚して争うか、という単純な構図では把握しきれない複雑な歴史的関係を築いていた。 以上の成果は、平成17年度に発表した論文1篇および図書(共著)1冊に反映されている。
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Research Products
(2 results)